英国で初のインド系首相誕生か。スナク氏トップで焦るバイデン、対中政策で米国反発の可能性

 

保守党政権が維持できなくなる可能性

では対抗馬のトラス氏はどうでしょうか?

外務大臣である氏の最大の特徴はジョンソン首相の政治的思想をほぼ引き継いでいる点です。一部には「新たな鉄の女」(インディペンデント紙)との声もあるそうですが、私が見る限り、首相の器ではないとみています。

サッチャー女史にならぶような箔付けをインディペンダント紙がするようならば同紙のクオリティもタブロイド並みではないかと勘繰ってしまいます。要は単なる頑固でジョンソン首相の前任のメイ氏と同じタイプでしょう。

政策についてもポピュリズム一徹です。「減税はすぐやる」「法人税引き上げ計画は撤回」「4月に導入した国民健康保険料引き上げ停止」など経済の本質を十分に理解していない可能性が高いとみています。

多分ですが、彼女の手腕では英国をまとめることはできないでしょう。

一方、日本の立場からすればトラス氏の方が都合はいいはずです。厳しい外交路線を貫き、TPP加盟申請に尽力しており、中国との距離もきちんと保つタイプです。

こう見ると私はスナク氏こそがマーガレットサッチャー女史と同じ系統のタイプで彼こそ「鉄の男」だとみています。

つまり一般受けは悪いというのが世間相場です。実際、下馬評でもトラス氏の方が現時点では有利と出ています。

お前はどっちが良いのか、と言われれば正直、強烈な一長一短で何とも判断しがたいところです。

外交と英国保守党の体面を考えればトラス氏、英国を再生させるぐらいのビジョンを期待するならスナク氏ですが、どちらの首相になっても野党の思うつぼだとみています。

つまり、保守党政権そのものが維持できなくなるかもしれません。保守党が野党に下野することをそろそろオプションとして取り込んでおかねばならないかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

プロフィール:岡本裕明

Blue Tree Management 株式会社取締役社長。ゼネコンで不動産事業、秘書を経たのち、1992年からカナダ・バンクーバーの不動産開発事業に従事。2004年にカナダ法人を買収、現在同地にてマリーナ運営、商業、住宅不動産事業、日本の書籍輸入販売などの他、東京でも不動産事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知られている。

記事提供:『外から見る日本、見られる日本人

image by : Michael Tubi  / Shutterstock.com

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