詰んだ欧州。米英主導の対プーチン制裁という詐欺策に乗って自滅するEU

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プーチン大統領のウクライナ軍事侵攻を受け、ロシアに対して一丸となり厳しい経済制裁を科している西側諸国。しかしこの「対ロ敵視」には裏があり、まんまと乗せられた欧州各国は着実に自滅への道を辿りつつあるようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では著者で国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、対ロ制裁が欧州各国の首を絞めるだけに終わる理由を解説。さらに彼らは今後も親ロに舵を切れないとし、そう判断する根拠を示しています。

自滅させられた欧州

ウクライナ戦争は、欧州を自滅させた。今年2月末にロシアがウクライナ侵攻を開始したとき、米国の最上層部である諜報界は、石油ガス輸入停止など厳しい対露経済制裁を行えばロシアは短期間で経済破綻し、ウクライナでの露軍の稚拙な作戦展開と相まって、ウクライナや欧米の勝利とプーチン政権の崩壊を実現できると自信満々だった。EUや独仏の上層部はその見方を軽信し、米英主導の対露制裁とウクライナ軍事支援に全面的に乗った。だが米諜報界は、米国覇権・欧米支配の体制を自滅させたい隠れ多極派に乗っ取られており、対露経済制裁とウクライナ支援でロシアを倒せるというシナリオは、欧米とくに欧州を自滅させるための歪曲話だった。

ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧
米諜報界を乗っ取って覇権を自滅させて世界を多極化

欧州経済はロシアからの石油ガスに強く依存している。代わりの輸入先の開拓には10年以上かかる。ロシアからの輸入を止めたら欧州経済は破綻に瀕する。欧州の上層部はそれに気づき、ロシアからの石油ガス輸入を止めると口で言いつつ実は輸入を続けるというウソ戦略をとった。だが同時に欧州は、米国の言いなりでウクライナに兵器を送り続けるなどロシア敵視を続けたため、ロシアは報復として欧州に石油ガスを送る量を減らし続けた。ロシアから欧州への天然ガスの最大の輸送路であるノルドストリーム1パイプラインは先日の定期点検後、流量が平常の20%にまで減らされた。欧州はロシア敵視をやめず、深刻な天然ガス不足が今後も続くことが確定的だ。欧米の指導者や分析者の中には、これで欧州の対露制裁の失敗が確定したと宣言する者たちが増えている。ハンガリーの親露的なオルバン大統領などがそうだ。
Hungary’s Orban says EU sanctions on Russia have failed

米諜報界は傘下の米英マスコミを使ってウクライナ戦争の報道を歪曲し、ロシア軍が惨敗して自暴自棄になって街区の破壊や市民の殺戮などの戦争犯罪をガンガンやったかのような話が世界に流布した。だが実際のロシア軍は、当初から現在までウクライナでの作戦を成功裏に進めており、街区の破壊も市民の殺害も最小限にとどめている。国連によると、ウクライナ市民の戦死者数は、開戦から5ヶ月近く経った7月12日にようやく5,000人を超えた。毎月平均1,000人ずつしか市民が死なない戦争は珍しい。露政府が「戦争」でなく「特殊軍事作戦」と呼んでいるのは理解できる。米国はイラクやアフガニスタンで開戦から5か月間で10万-20万人ぐらいずつ殺した。ロシアは、最終的にウクライナを自国の傘下に入れたいので、街区破壊や市民殺害をできるだけやらない作戦を遂行し、成功している。

Civilian Toll in Ukraine Conflict Passes 5,000 Mark, UN Says
資源の非米側が金融の米国側に勝つ

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