政治家個人より「党」が悪い。自民と統一教会が“組織的関係”であるこれだけの証拠

2022.08.17
 

そして、旧統一教会については、その関連団体「勝共連合」の「反共産主義」を安倍元首相の祖父・岸信介元首相が利用した歴史がある。だが、現在は自民党の支持団体として、集票に徹しているようにみえる。政策的には、統一教会は日本会議の主張と相似することが指摘されている。合同結婚式を主宰してまで伝統的な結婚の聖性を維持しようとすることが、伝統的な「家制度」の維持を謳う日本会議と似ている。

勝共連合は、「ジェンダーフリーや過激な性教育の廃止」「選択的夫婦別姓反対」「男女共同参画社会基本法の改廃」を政治目標に掲げている。だが、前述のように安倍政権以降の自公政権は、これらの政策をまったく採用していないのだ。

さらにいえば、「統一教会」は、その成り立ちから韓国、北朝鮮との深い関係があるとされる。だが、安倍政権期、日韓関係は「従軍慰安婦問題」「元徴用工問題」など最悪といっていい状況だった。また、北朝鮮拉致問題はまったくといっていいほど前に進まなかった。これらの事実から、統一教会と南北朝鮮のコネクションを、安倍首相が交渉の裏ルートとして使ったということもなさそうなのだ。

要するに、さまざまな宗教団体が自民党の支持団体となり、自民党のために集票している。だが、宗教団体が政策的な目標を実現しているとはいえない。また、宗教団体が政治の裏部隊で暗躍する「陰謀論」のような話もありえない。その意味で、岸田首相の「宗教が自民党の政策決定に宗教が影響を与えることはない」という主張は、嘘を言っているわけではない。それについては、公平に書き記しておこうと思う。

ただし、宗教が自民党政権の国内政策や外交政策に影響を与えてはいなくても、教団のさまざまな「陳情」に対して、自民党が利益を与えていた可能性は否定できない。例えば、すでに指摘されている、2015年に統一教会からの世界平和統一家庭連合への名称変更の申請が文化庁に受理され、認証された件である。

この認証の過程で、当時の下村博文文科相など政治家の関与があったのではないかと疑われている。一方、岸田政権の末松信介前文科相はこの対応について、形式的に要件を満たした申請を受理しただけで、拒めば「行政上の不作為」となる恐れがあったと説明し、下村氏の指示はなかったとしている。まだ真相はわからないということを公平に記しておく。

しかし、名称変更のような大きな案件でなくても、日常的に、教団からの「陳情」を受けての自民党からの細かな便宜供与が一切なかったとはいえないのではないだろうか。

次に、旧統一教会の選挙活動について考えてみたい。基本的にいえば、宗教団体が熱心に政治とかかわる理由は、自民党など政党の有力な支持団体となり、「社会的な信用」を得ることだ。政党の有力な支持団体という「お墨付き」を得れば、信者を集めやすくなる。信者を集められれば、「お布施」「寄付」など資金集めもやりやすくなるのだ。

宗教団体の経営は、見た目ほど安定していない。少子化による人口減や、宗教に対する根強い不信感があるため、信者を集め、資金を集めるのに苦労している宗教団体は少なくない。ゆえに、宗教団体は熱心に選挙活動を行ってきた。

print
いま読まれてます

  • 政治家個人より「党」が悪い。自民と統一教会が“組織的関係”であるこれだけの証拠
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け