政治家個人より「党」が悪い。自民と統一教会が“組織的関係”であるこれだけの証拠

2022.08.17
 

これは、小林氏のように一代で政治家になった議員だけの話でもない。世襲議員でも同じことである。例えば、父親など親族が自民党議員で、その地盤を引き継いで立候補する新人候補も、親族の代から世話になっている党・派閥の幹部や、地元のベテランスタッフに逆らって初めての選挙を戦うことなどできない。

例えば、安倍元首相や岸田首相など、地元ではなく、東京の学校を卒業した世襲議員は多い。地元とのつながりは、親族のつながりしかない場合も多いのだ。旧統一教会が、親族の代からの支持団体だったら、黙って支援を受ける以外の選択肢はないのだ。

自民党と旧統一教会の関係については、個別の議員に責任を押し付けて終結とするのは酷である。次回の選挙で、地盤の弱い若手議員などが落選することもあるだろう。それでは「トカゲのしっぽ切り」のような話になってしまうのではないか。

語弊を恐れずいえば、選挙区で祝電を送り、挨拶をした議員たちが、教団と深い付き合いがあるわけではない。本当に教団と密な関係にあるのは、全国の選挙区の動向を掌握し、教団とどの選挙区に票を割り振るか綿密な調整をし、個別の議員に指示を出している党や派閥の幹部、ベテランのスタッフたちではないのかということだ。

すでに述べたように、党・派閥の幹部クラスが旧統一教会の名称変更の際に便宜を図ったという疑いが出ている。その真偽はともかく、幹部クラスの教団との付き合いのほうが、はるかに政治への影響があるのは間違いない。

しかも、今後表向きは関係を絶った形にしても、裏でつながっていると、国民から見えない形となる。政策決定への圧力も起きやすくなり、国益にかかわる深刻な問題も起きかねないのではないか。

要するに、選挙に弱い若手議員を「トカゲのしっぽ切り」して、自民党と教団との関係を表面的に終わった形にしても、本質的な問題はなにも解決しない。繰り返すが、自民党と旧統一教会の関係は、「組織的な関係」だと断言したい。首相、幹事長、党幹部、派閥の幹部が教団幹部と完全に絶縁することでしか、自民党はこの問題に対する「道義的な責任」を果たせない。

image by: 首相官邸

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

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