中国でディオール批判。グローバルファッションの時代は終わるのか

 

5.リアルな等身大のキャラクター設計

ファッションデザイナーの仕事は、服を作ることではなく、人のイメージを創ることだ。従って、ヘア・メイク、アクセサリー、靴も含まれる。それ以前に、その人はどんなことを考え、何を理想とするのか。どんな生き方をするのか。仕事や家族に対して、どのように考えているのか。あるいは、どんなものを食べて、どんな空間で生活するのが良いと考えているのか。

この人間像の設計は、これまで曖昧だったと思う。なぜなら、服やアクセサリーを販売する、あるいはブランドライセンスで売上を上げるというビジネスモデルには、それほど具体的なイメージは必要ないからだ。

しかし、そのビジネスモデルが変化するかもしれない。例えば、デジタルコンテンツとしてのファッションではどうだろうか。アバターの設計を行い、アパターの着用する服のコレクションを販売する。デジタルデータとしてのファッションなら、資源を無駄遣いすることはないし、環境に負荷を与えることもない。

コスプレは、二次元のイメージを三次元に復元したものだ。ここで考えたいのは、リアルに生きている等身大のキャラクターであり、リアルな時間と環境の中で生きている。ビジュアルな設計も重要だが、内面的なマインドをどのように設計するかが重要になる。

ファッションの概念が変わるとしたら、ファッションビジネスの概念も変わるだろう。物販だけでなく、教育やコミュニティを含むビジネスになるかもしれない。それらを様々な専門家チームと共にディクションしていくのが、新たな時代のファッションクリエイティブ・ディレクターになるのではないか。

■編集後記「締めの都々逸」

「ファッションなんて なくてもいいさ 人が生きてりゃ 何か着る」

こんな大変な時代にファッションなんて必要ないのではないか。流行やトレンドで使い捨てていくのは勿体ない。誠に御もっともなご意見です。しかし、戦後の荒廃した時代にディオールのニュールックが希望を与えたのも確かです。

戦争で荒廃した世界。環境破壊で荒廃した世界もあるだろうし、過激な環境保護で荒廃した世界なんてのもあるかもしれません。とにかく荒廃した時代には美しいもの、喜びを与えるものの価値が出てくると思います。それがファッションかどうかは分かりませんが、大変な時代こそ必要な無駄なモノやコトもあるのではないか、と思う次第です。(坂口昌章)

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image by:Creative Lab/Shutterstock.com

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