中国でディオール批判。グローバルファッションの時代は終わるのか

 

3.ローカルファッションへの転換

ファッションの役割とは何だろう。年2回のコレクションを軸に発信される、ファッショントレンド、流行が常に商品の陳腐化を促しているのは確かだ。流行追随の購買行動は商品の廃棄を増やし、資源の無駄遣いを促しているという批判もある。

もし、環境保護の観点から、国民服、人民服のような世界標準服着用が義務づけられたら、世界はどうなるのか。確かに制服は合理的だ。流行もなくなるし、平等意識も高まるだろう。一方で、同調圧力が高まり、全体主義的思想が蔓延するのではないか。自由な芸術活動や自己表現が抑圧されるかもしれない。

人々の自己表現は経済的には無駄に見えるかもしれないが、精神的な自由と活力を生み出す源泉にもなりうる。世界が多様性を認めるのならば、各国が独自のアイデンティティを持ち、独自のファッションを発信することにも意味があるのではないか。

グローバルファッションから、各国、各地域のアイデンティティに基づいたローカルファッションへの転換である。

4.グローバル商品とローカル商品

もう一つ、ファッションが批判される問題として、大量廃棄がある。大量生産大量消費は大量廃棄をもたらす。これまでのファッションビジネスは量のビジネスが中心だった。売上高、利益高の競争だ。しかし、売上高を伸ばすことは、環境負荷を高めることでもある。

サスティナビリティを求めるならば、必要以上の売上を求めてはならない。限りある地球の中で全ての企業が無限に売上を伸ばすことはできない。そして、競争原理だけで成長をコントロールすることも難しい。重要なことは、需要に見合った生産。例えば、注文生産であれば、競争が起きたとしても過剰生産にはならない。

と言っても、グローバルな大量生産は残るだろう。日用品としての衣料品は安くて品質の良い商品が良いに決まっている。そして、それは大量生産でしか実現できない。原産国がどこかとか、どの国の企業がその商品を生産しているか等は次第に意識されなくなるだろう。アパレル製品はグローバルな商品とローカルな商品とに二極化していくのではないか。

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