宗教とは何か 「日本人は無宗教」というウソ
「日本人は無宗教」というある種の特権意識が、旧統一教会という無茶苦茶なカルト集団を蔓延らせた側面も否定できない。
アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターが2012年に発表した統計によると、日本人の約6割が「無宗教」と答えるという。
しかし、実際には、神道や仏教には明確な入会儀式が存在せず、その基準もあいまいなため、現状には即してはいない。そこで、「現実に信仰している宗教は?」と聞かれると、「仏教」あるいは「神道」と答える日本人がほとんど。
2014年の文化庁の宗教人口によると、神道49%、仏教46%となっており、ほとんどの人が神道や仏教を信仰しているのは、まぎれもない事実。
歴史的にみても、日本人が信仰してきた神道は、山や海、川や植物など、あらゆるものに“神”が宿ると考えてきた。また、キリスト教やイスラム教と異なり、神道には「経典」というものが存在しない。
宗教を英語でいうと「Religion」。これはラテン語のreligioの「ふたたび」という意味の接頭辞reと「結びつける」という意味のligareの組み合わせであり、「再び結びつける」という意味。
そこから、「宗教」とは、神と人を再び結びつけることと理解されている。
そういう意味で、「初詣」も「クリスマス」も「七五三」も立派な宗教的行為だ。
政治と宗教 問われる憲法解釈
日本において、「政治」と「宗教」との関係は非常にセンシティブなものだ。
当たり前だが、日本国憲法は、「信教の自由」を保障。であるからこそ、宗教法人は自由に宗教活動ができる。
一方で、憲法第20条で、
いかなる宗教団体も(中略)、政治上の権力を行使してはならない。
と明記。しかしながら、日本では宗教団体の政治活動を禁止していると読めるこの条文が、歴代の内閣により極端に狭く解釈されてきた(*4)。
すなわち、ここでいう「政治上の権力」とは、立法権、裁判権、課税権などを行使する行為であると定義。
そのため、選挙の支援や政治献金などの我々が普通に思う政治活動はすべて、憲法が定めるところの「政治上の権力」には該当しないというのが、現在の日本における憲法解釈だ。
なので日本では特定の宗教団体、たとえば創価学会が政権与党の後ろ盾になるのも問題なく、あるいは統一教会のように警察の取り締まりをゆるくさせる意図をもち元国家公安委員長や警察出身の国会議員などに対し集中的に献金をするなどしても問題もない。
そもそも日本において、近代の歴史上も厳格に「政教分離」が適用されたことは歴史上、なかった。
■引用・参考文献
(*1)西日本新聞8月14日付朝刊
(*2)「子どもに『政治ってなに?』と聞かれたら」
(*3)山根久美子、高橋大作、波多野大介「日本人なぜタブー?政治の話 SNSで届いた選挙の疑問」朝日新聞デジタル 2019年7月19日
(4)「政治と宗教の関係は今のままでいいのか」ビデオニュース・ドットコム 2022年7月23日
(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年8月20日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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