実は権力闘争に敗れていた遠山の金さん。理想的お奉行様の意外な真実

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当然ながら水野や鳥居にすれば、遠山は迷惑で邪魔な存在です。この為、遠山は北町奉行を解任され大目付に異動させられました。大目付は大名目付の略称が示すように大名を監察する役目です。役高は町奉行と同じ三千石ですが格は大目付が上でした。従って遠山は昇進したことになるのですが、江戸時代中期以降、大名の改易が減ったこともあり、大目付は名誉職になっていました。

町奉行には町奉行所という役所があり、与力や同心を従えて実務を担っていましたが、大目付には特定の役所はありません。大目付に任じられた者の屋敷が役所代わりで、自分の家来が役人でした。ですから、仕事に邁進したい旗本からすれば閑職であったのです。遠山の大目付昇進は体のいい棚上げでした。また、大名の監察という役目柄、幕府の政治、政策には関与できませんから、水野、鳥居にすれば邪魔者を退場させたのですね。

では、「遠山の金さん」は権力闘争に敗れ、失意の晩年を過ごしたのかというと、そうではありませんでした。天保の改革の失敗で水野、鳥居が失脚すると町奉行に復帰します。但し、北町ではなく南町でした。将軍徳川家慶の希望です。町奉行の裁きは時として将軍が上覧することがあり、遠山の裁許ぶりを家慶は高く評価していたのです。

また、「遠山の金さん」というと北町奉行のイメージが強いのですが、事実は北町奉行は約三年であったのに対し、南町奉行は約七年務めています。

(メルマガ『歴史時代作家 早見俊の「地震が変えた日本史」』2022年8月26日号より一部抜粋。この続きはご登録の上、お楽しみください)

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1961年岐阜県岐阜市に生まれる。法政大学経営学部卒。会社員の頃から小説を執筆、2007年より文筆業に専念し時代小説を中心に著作は二百冊を超える。歴史時代家集団、「操觚の会」に所属。「居眠り同心影御用」(二見時代小説文庫)「佃島用心棒日誌」(角川文庫)で第六回歴史時代作家クラブシリーズ賞受賞、「うつけ世に立つ 岐阜信長譜」(徳間書店)が第23回中山義秀文学賞の最終候補となる。現代物にも活動の幅を広げ、「覆面刑事貫太郎」(実業之日本社文庫)「労働Gメン草薙満」(徳間文庫)「D6犯罪予防捜査チーム」(光文社文庫)を上梓。ビジネス本も手がけ、「人生!逆転図鑑」(秀和システム)を2020年11月に刊行。 日本文藝家協会評議員、歴史時代作家集団 操弧の会 副長、三浦誠衛流居合道四段。 「このミステリーがすごい」(宝島社)に、ミステリー中毒の時代小説家と名乗って投票している。

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