また、罰金で多いのがやはり交通違反に関するものです。4月上旬には河南省で、GPSに基づく車両測位機器の接続が切れていたということで2,000元(約4万円)の罰金を科された男性のトラック運転手が、農薬を飲んで自殺するという事件が起きています。
男性の遺書には、一介の運転手がGPSが切れていたことにどうして気づくことができるのかという憤りとともに、自らの死によって指導者にこの問題を訴えたいと書かれていたそうです。
● ささいな交通違反に高額な罰金…抗議の死も 中国、地方政府が財源目的で過剰な取り締まり
2021年の交通違反に関する罰金は3,000億円(約6兆円)にも達しており、これは日本における交通反則金(500億円強)の100倍以上だということです。このように中国で交通違反の罰金が激増している背景には、監視技術の発達や監視カメラの増加があるとされています。
国営新華社発行の評論誌「半月談」(電子版)によれば、東北地方のある県では、一般予算収入のうち3分の1が交通違反の罰金でまかなわれていたそうです。
中国メディアによれば、近年、中国社会では「乱収費(無差別課金)、乱罰款(無差別罰金)、乱攤派(権力による法的根拠のない賦課)」の「三乱」が横行しており、民衆の不満が高まっていると報じられています。
山東省成武県では、一部の大型トラック運転手が、地元政府の交通運輸局と結託し、運転手が1ヶ月分の罰金(通称「月票」)を先に支払うことで、当局がトラックの過載積などの違反を1ヶ月間見逃すという、本末転倒なことも起きています。
そのため、国務院は8月17日に、「罰金による歳入を禁止し、罰金収入を業績評価の指標とすることを排除する」ことを求める通達を出しました。
しかし、中央政府がいくらこのような通達を出しても、ほとんど効果はないでしょう。というのも、中央政府自体が恣意的な懲罰行為を行っているからです。たとえばジャック・マーが金融当局に批判的な発言をしたことで、アリババ傘下のアントは上場延期に追い込まれ、アリババも独禁法違反で3,000億円もの罰金を科されました。
● 中国当局、アリババに3000億円の罰金 独禁法違反で 過去最大 「取引先に圧力」問題視
その他、テンセントやディディなど、新興企業が次々と巨額の罰金を科されていますが、これらは、巨大になった新興企業が政府に逆らわないよう、統制を強めているためだと目されています。
また、今年秋の共産党大会に向けて、習近平政権は反腐敗運動を強化、そのため汚職の疑いをかけられた高官が、自殺と思われる謎の急死を遂げるケースが増えています。このように、政権の都合によって粛清を強化するということが繰り返されてきたのです。
● 中国高官、謎の急死相次ぐ 党大会前に「反腐敗」強化で重圧か【中国ウオッチ】
先日、古参の共産党員3人が、習近平政権への権力集中や個人崇拝に対して警鐘を鳴らす文章を発表し話題となりましたが、そのためこの3人は「厳重な監視下に置かれ、いつでも身に危険が及ぶ可能性がある」状況にあるとされています。
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