プーチンにも習近平にも睨まれた日本。政治リスク覚悟でビジネスを続けざるを得ない我が国のジレンマ

2022.09.06
 

ロシアだけじゃない。日本を襲う「チャイナ・リスク」の数々

一方、リスクは何もロシアだけではない。今日の大国間対立と日本の立ち位置は、日中関係が悪化するという潜在的リスクを内包している。今日の中国の対日姿勢は、圧力と関与を状況に応じて巧みに使い分けてくるもので、決して中国も日本との必要以上の関係悪化を望んでいるわけではない。しかし、中国は日米の切り離しを狙っており、日本が米国と関係を密にすることは良く思っていない。よって、米中対立が激化し、日本が米国と結束を固めるという構図が長期化すればするほど、日中関係が冷え込む可能性は高まる。

特に、昨今緊張が高まる台湾情勢は、日中関係の悪化を誘発するリスクになろう。今日、米中だけでなく中台の関係も不可逆的なところまで冷え込んでおり、仮に偶発的衝突によって一気に軍事的緊張が高まれば、安全保障上、日中は必ず対立軸になる。そうなれば、日本の対応に不満を持つ中国は、日本へ政治的揺さぶりを仕掛けるため何かしらの行動に出てくるだろう。

具体的には、日本に対する経済制裁が1つ考えられる。2010年9月、尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件の直後、中国側は日本への報復措置としてレアアースの輸出規制に踏み切った。また、2005年に当時の小泉首相が靖国神社を参拝した際、中国では反日感情が高まり各地で日本製品の不買運動が起こった。2012年には当時の民主党政権が尖閣諸島の国有化を宣言した際、中国では反日デモが各地に広がり、不買運動を超えてトヨタやパナソニックの店舗・工場が放火され、日系デパートやスーパーなどは破壊や略奪の被害に遭った。

また、中国では日本人の不当な拘束、逮捕が続いている。2021年1月には、スパイ容疑で拘束されていた日本人男性2人の懲役刑が確定したことが明らかになった。1人は2016年に拘束され懲役6年の判決を受け、もう1人は2015年に拘束され懲役12年の判決を受けたが、それに不服申し立てを行った2人は北京にある裁判所に控訴していたが棄却された。2019年には、北海道大学の中国近代史を専門とする教授が日本へ帰る直前に北京の空港で拘束され、広州市では拘束されていた大手商社の40代の日本人男性が現地の裁判所からスパイ容疑で懲役3年の実刑判決を言い渡され、湖南省長沙市では50代の日本人男性が国内法に違反したとして拘束されるケースがそれぞれ明らかとなった。今後も邦人が拘束されるケースが続く可能性が高い。

【関連】欧米台湾重視の我が国にイライラ?中国で「日本人拘束」が急増の意味不明

以前と比べ、今後中国での日本企業の経済活動はやりにくくなることを十分念頭に入れる必要がある。政治リスクがあっても仕事を継続せざるを得ないというジレンマは、今後さらに日本企業にとって大きな悩みの種となろう。

image by: plavi011 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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