ロシア軍司令官も捕虜に。総反撃のウクライナ軍に為す術なきプーチン

 

そして、9月6日から開始した奇襲作戦は、現在ウ軍が2,000km²の地域を奪還し、今も範囲を拡大している。この方面のロ軍総崩れで、この地域のロ軍全体に安全な場所まで落ち着いて、撤退するようにロ軍の放送があった。

イジューム撤退も、この放送の後であり、この地域のロ軍全体が崩壊したことになる。東部方面司令部はイジュームからオスコル川東岸に8日には移動させていたという。

ロシア国防省は10日、「ドンバス解放という特別軍事作戦の目標の達成に向け、ドネツク方面への努力を強化するため」に、ウクライナ東部のバラクリヤ、イジューム地域のロシア軍部隊の配置を変更すると発表した。ロシアでは、戦線が瓦解し雪崩を打って、総退却することをを「転進」というようである。

しかし、ウクライナ政府は、先走る攻撃の情報を危惧して、ウクライナ国防次官ハンナ・マリャルは、「取りざたされる集落のいくつかは、ウクライナ軍が部分的にしか奪還していないし、いくつかは現在の作戦の範囲外にある」と述べて、攻撃失敗のダメージを少なくする方向に情報統制したいようである。

ウ軍追撃も、ロ軍の増援部隊と、どこかで激突することになるので、その場合の保険が必要になっている。ウクライナ政府も冷や冷やしながら戦況を見ているのであろう。どうも、補給に問題が出始めている可能性がある。攻撃速度が早くて、補給が追いつかない可能性もある。

それにしても、ウ軍が奇襲攻撃の準備をしている時に、極東で大軍事演習をしている場合なのであろうか?それもイジュームを守備増強できる予備兵器や予備部隊が、恒例のボストーク演習のために中国国境近くにあることを、ロシア軍事ブ
ロガーが発信して、ロ軍の不首尾に怒っている。

そして、このロ軍敗戦でロシア国内の雰囲気も変化している。クレムリンを非難する声が、この軍事作戦を支持していた右翼系・軍事系の人まで出すようになったことだ。

このため、急遽、東部方面にロ軍はルハンスクやバクムットに展開していた部隊を派遣するようである。

イジュームは放棄したので、オスコル川東岸を新しい防衛線となるが、しかし、ウ軍はルガンスク州を攻撃し始めたことで、この防衛線も成り立たない可能性がある。

そして、部隊を引き抜かれたスラビアンスク東側やバクムットのロ軍の配置がスカスカになり、次にウ軍が狙うのは、この地域であり、すでに、その作戦も始動したようだ。ドネツク空港が攻撃されているとの情報もある。情報を追いかけるのも大変であるが、ガセもあり、真偽がよくわからない情報もある。

もう1つ、ロ軍の優秀部隊はヘルソンの正面に配分されたが、クピャンスク、イジュームが奪還された今、ルガンスク州とドネツク州の防衛に主力を置くのか、クリミアとヘルソンを重視するのか、軍事作戦の構想を大幅に見直す必要に迫られている。戦域を縮小させることが必要であり、それをどこにするかだ。

ロ軍の人員不足で、点と線しか守れないので、ウ軍特殊部隊の浸透を止めることができない。戦線を縮小して、ウ軍の浸透を抑えないと、次から次へとロ軍総崩れになる。

現状の戦況は、次のマップで見てください。

Russo-Ukrainian War David Batashvili

このように、ロ軍の兵員不足や訓練不足、その上砲弾と装甲車両も不足しているようであり、チェチェン共和国のカディーロフ首長は、軍団内の精鋭部隊である「南」大隊と「北」連隊をウクライナに派遣するとした。

このため、ロシア軍内でチェチェンのカーディロフ私兵の位置が徐々に高まっている。ロ軍正規部隊はチェチェン兵を軽蔑していたが、ロ軍苦戦で、仕方なく使用するようであるし、いろいろな前線に投入されている。

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