それに対し中国人民解放軍の中の強硬派が台湾侵攻を主導し、アメリカなどの反応が起こったら、場合によっては中国の自衛権発動または台湾の“防衛”という、ロシアっぽいこじつけで核兵器の使用にエスカレートするというドミノ倒しに巻き込まれるのではないかという懸念です。
「そこまでは考えすぎだろう」というご批判を受けるかもしれませんが、これはどうも中国でも、アメリカでも、そして欧州各国の軍・安全保障関係者の間で結構真剣に分析され、綿密に対応のためのシナリオが立てられ、同時に予防するための方策も練られている“具体的なシナリオ”と言えます。
G7と共同歩調を取るとしている日本が、このシナリオ分析の輪に加わっているかは知りませんが、すでに実行済みの案件を巡って国会で論戦している暇があったら、ぜひ近未来的に国民の生命と財産を守り抜くための策を議論していただければと願います。
ここまで散々、恐怖のシナリオについて描いてみましたが、実際には私はロシアによる核兵器の使用の可能性は以前よりも高まり、また使用を正当化するための材料は増えたと思う反面、実際に使用することはないだろうと信じています。
核抑止という理念の下、これまで77-78年間核兵器は使用されずに済んでいますが、心理的な危機がこれまでにないほど高まったとしても、結局は使用されることはなく、それが【核兵器は実際には決して使えない兵器】という理解が広まり、それが核廃絶に繋がっていくというシナリオを追求したいと願っています。
しかし、2022年2月24日を前に、「ロシアがウクライナに実際に軍事侵攻することはない」と“予想”し、見事にその予想を外した立場としては、かなり心配ではありますが…。
以上、国際情勢の裏側でした。
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