プーチンの背中を押す金正恩。習近平すら核使用ドミノ倒し恐れる緊急事態

 

そして何よりも10月16日の中国共産党大会が終了したのち、北朝鮮が国連安保理決議を無視し、7回目の核実験を行ったり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を行ったりするのではないかとの懸念が高まっています。

もしこの懸念が現実のものとなるのであれば、今、ウクライナ問題にどっぷりとコミットしてしまっているアメリカ政府と軍は、北朝鮮にも対峙しなくてはならず、加えて台湾問題と絡み、中国の出方にも備えなくてはならないという複数正面への展開という、軍事作戦上はあまり賢明ではないとされる状況に陥ることとなります。

それを意識してか、それとも北朝鮮に対する最後の対話ラインを維持しようという狙いなのか、アメリカ政府は10月5日に緊急招集された国連安全保障理事会会合で、フランス、英国、アルバニア、ノルウェー、アイルランドとともに北朝鮮の行いを非難する“報道声明”(注:法的拘束力を持つ安保理決議や安保理の公式見解を示す議長声明よりはレベルは弱い)を提案しましたが、予想通り中国とロシアの反対に遭い、2022年5月の対北朝鮮制裁強化決議への拒否権行使に続き、世界の分断が明確になりました。

これはウクライナでの戦争を機に決定的になった国際社会の分断の結果とも言えますが、同時に国連安全保障理事会の機能不全が明らかになったものと思われます。

この大国間の分断で安保理の機能がマヒし、ウクライナ問題、台湾情勢に世界の関心が向いている間に、北朝鮮は着々とミサイル技術の向上に突き進むことが出来たと言え、ちょっと強引な分析をすると、ウクライナ問題が熱を帯び、世界の分断が進み、協調体制が崩壊した中、北朝鮮は得をするという図式になっています。

あまり報道されませんが、その見返りでしょうか。北朝鮮は迅速にロシアによるウクライナ東南部4州の併合を支持しましたし、ロシアに対する武器供与のみならず、ロシア東部に北朝鮮から労働者を送り込んで、手薄となったシベリアをカバーしているという情報も入ってきています。

その見返りは国連からの非難・制裁の強化を阻止することだけでなく、これまで旧ソ連とロシアが躊躇していた核関連技術およびミサイル技術の提供という形で返ってきているとも言われています。

北朝鮮の弾道ミサイル発射後、米韓による4発の地対地ミサイル発射という示威行為はあったものの、アメリカ政府は台湾問題との絡みで、今、北朝鮮をめぐって中国と揉めるのは避けたいという懸念と、ロシアに対してウクライナと北朝鮮という2正面での対立は避けたいという事情から、米国は今、北朝鮮に対して致命的なショックを与えることはないという読みが、北朝鮮政府にはあるようです。

ただこのエリアで核兵器を使用するのが北朝鮮だけなのかは、かなり気を付けるべきだと思いますが。

そして大きな情勢の変化が訪れるきっかけになりうるのが10月16日の中国共産党大会が開催され、閉会した後の中国の出方でしょう。

いろいろと入ってきている情報からは、中国がすぐに台湾に侵攻するようなケースは考えづらいのですが、中国政府内部が恐れているらしい事態が存在するようです。

それは【核使用ドミノ】と言われており、誰がトリガーを弾くのかは分かりませんが、ロシアまたは北朝鮮が核兵器の使用または実験に走った場合、核兵器使用への心理的かつ制度的な箍が外れ、ロシアが“自国の自衛目的”という名目で戦術核を用い、それにNATOが限定的な核使用で反抗した隙に、北朝鮮が核実験を強行した場合、中国は地理的に無傷では済まないという懸念です。

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