自治体に“脅し”も。なぜ政府はマイナンバーカード普及をここまで急ぐのか

 

カードの一元管理という紐付けがやたら多いのが日本の特徴!

ところで、このマイナンバー制度はどういう経緯でスタートしたのでしょうか。

2013年5月に安倍政権下で成立した「マイナンバー法」ですが、15年から個人番号通知カードを配り、16年1月から税金(所得税・住民税)、社会保障(年金・健保・雇用)、災害(被災者台帳作成)の3分野に限り、「紐付け」しての運用開始でした。

自治体に個人番号の申請を行えば、身分証代わりの写真入り個人番号カードも交付されます。この制度は、かつて何度も頓挫した「国民総背番号制度」の導入に他なりません。2012年に民主党政権が提出した法案(解散で廃案)をベースに安倍政権が成立させたものでした。「マイナンバー」などと親しみやすい名称ですが、「国民監視制度」のスタートに他ならない天下の悪法なのです。

当時の安倍政権は、他の先進国でも共通番号制度が導入されているかのような印象操作を行いましたが、すべてがとんだまやかしでした。米国では、税と社会保障のみに限定の上での選択制です。それでも情報漏洩や成りすまし犯罪を急増させました。イギリスは、06年に任意加入でIDカード制を始めましたが、政権交代でプライバシー侵害の悪法として廃止されました。ドイツやイタリアは税務識別のみの共通番号です。日本のように預金とリンクさせたり、これから様々な分野の「紐付け」を増やす狙いが透けて見えるのは、日本のマイナンバー制度だけなのです。

すでに閣議決定によって、18年1月から預金口座へは任意でのマイナンバー提示を求めるように仕向けました。おそらく、預金口座もそのうちすべてが「強制」になるでしょう。小さく導入して、大きく膨らます──これは歴代自民党政権のやり口だからです。国民に反対されそうな法律は、最初は小さく生んで大きく育てる──が伝統手法だからです。消費税もしかりだったでしょう。

キャッシュレス時代に新紙幣発行の謎?

今後は不動産の登記情報、過去の病歴などを含めた医療情報、すべての預金口座の残高、学歴や職歴、勤務先や戸籍の情報、犯歴や家族構成に加えて、顔認証や遺伝情報といった超極秘の個人情報との「紐付け」も視野に入ってくるはずです。国民のプライバシーを丸裸にしていくわけで、中国共産党の監視政策を踏襲するような路線です。

ところで、マイナンバーカードの保険証としての活用は、すでに2021年10月から始まっていますが、現状では使えない医療機関だらけです(読み込み機器導入医療機関は3割のみ)。カードの読み取り機器の導入コストや毎月3,000円かかる保守管理費、数年ごとの機器更新の費用負担もあり、肝心の医療関係者の7割がオンライン資格確認(健保の利用資格のチェック)に反対しており、全国保険医団体連合会も、会長名でオンライン資格確認の義務化に反対を表明しています。

なぜ政府は、性急に事を進めようとしているのでしょうか。実は、2024年の新紙幣発行(改札)と大いに関係がある──とする穿(うが)った見方もあるのです。

ご承知の通り、2024年度前半には、新紙幣発行での改札が行われます。政府は、20年毎に行う偽札防止のための改刷──と説明していますが、本当にそうでしょうか。キャッシュレス化社会を目指すご時世に、わざわざ新紙幣を発行する意味をいぶかる向きも少なくないのです。キャッシュレスとは、現金での決済をしないことです。

日本は現金信仰が根強いことと、ATM網のインフラが普及していること、またプリペイドカードやクレジットカード、公共料金引き落とし制度などの多くのキャッシュレスサービスがありすぎて複雑なため、かえって全体統括でのキャッシュレス化が遅れているといわれます。

中国では屋台での決済や物乞いへの寄付もスマホ1台で行われています。皮肉な話ですが、日本のような先進国より、偽札横行で不便このうえなかった国のほうがキャッシュレス化が一気に進んだのです。

日本のキャッシュレス決済比率は2020年に30%近いものの、政府は25年の大阪万博までに40%台を目指す考えです。

キャッシュレス化がすすんだ国では、現金を一切持たずスマホだけで決済が完結します。日本もコロナ禍後を見据えて、インバウンド需要取り込みのためにもキャッシュレス社会を目指しているのですが、不思議なことに2024年に新紙幣を発行するというのです。

この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • 自治体に“脅し”も。なぜ政府はマイナンバーカード普及をここまで急ぐのか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け