中国メディアすら“称賛”をやめた、中国の新最高指導部7人の顔ぶれ

 

例えば、今回の20大(中国共産党第20回全国代表大会)への反応だ。これまで政治報告などさまざまな発信がなされてきて、その都度多くの「称賛」がネットにあふれた。しかし「七皇」のお披露目に対しては、そうした「称賛」がピタリと止んでしまったのである。なんとも分かりやすい反応だ。

不満の多くは李強の抜擢に向けられていたと思われるが、それだけではない。今後もしトップが固定されたまま首相だけが交代するという流れができれば、習の4期目もその向こうに薄っすらと見えてくるということへのささやかな抵抗だとも指摘されるからだ。

もちろん別の見方もある。それは、今回の人事から指導部はいよいよ次世代のリーダーの育成に入ったという見立てだ。そのキーとなる人物が丁薛祥である。

丁について筆者は、習がドナルド・トランプ大統領と大阪で会談した当時(2020年)から「習の意中の人」と記してきたので、期待し過ぎなのかもしれないが、立ち位置的には面白い。というのも序列第6位とはいえ、年齢を考えれば李強に次ぐポジションで、さらに李がこのまま首相を務めるならば、なおさら「次」の人材として期待が高まるからだ。

実は筆者は『週刊東洋経済』の連載で、丁のほか胡春華と陳敏爾重慶市党委員会書記の存在にスポットを当ててきた。その丁とは逆に冷や飯どころか絶望の淵に立たされたのが胡春華だ。重要ポストからは遠ざかることがはっきりしてしまった。

年齢や能力から考えて、政治局委員にとどまって「次」をうかがったとしても不思議ではない人材なのに、政治局委員からもはずれてしまったのだ。その意味では陳はまだそうしたポジションに留まったといえる。

この人事をメディアは「習近平と共産主義青年団=共青団の対立」として描くが、それだけでは説明できない。胡の能力は確かに習に認められていたし、実際に党の一つ目の100年目標である「脱貧困」では大きく貢献したとして高く評価もされている。この点を考慮すれば、単純に習近平の権力の維持にとって邪魔な存在だったと考えるのが妥当だろう。

ネットの反応もおそらく同じだ。胡を政治局委員からも外したのは、やはり習の4期目への布石だととらえたのだ。この視点に立てば、当然、丁の「次」も危ういという話になり、習の4期目は相変わらず5年後も引きずることになるのだろう──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年10月23日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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