“裸の王様”と化した米国の大誤算。従うのは日本だけという情けない現実

 

石油の国際政治学の枠組み

それに加えて、もっと悪いことに、バイデンは石油をめぐる国際政治学がどのような枠組みの下で動いているかをほとんど理解していなかったように見える。

近年の世界の原油生産体制は米国、ロシア、サウジの3極構造になっている。産出量の第1位から第3位がその順で、おおよそ1,000万バレル/日程度かそれ以上で競っている。サウジは石油輸出国機構(OPEC)のイラク、イランなどを含む13の加盟国の中心である。ロシアは非OPECの「プラス」と呼ばれるグループ10カ国のまとめ役で、この両者が一緒に会合を開くことを「OPECプラス」と呼び、これが原油の価格決定に決定的な役目を果たす。つまり、はっきり言って、OPECのサウジとプラスのロシアが談合すると世界の原油需給の大勢は決してしまうのである。

「OPECプラス」以外は米国、カナダ、中国など10カ国でこれらは組織を成していない。その半分は米国の言うことを聞くかもしれないが、半分は聞きそうにない。下表ではそれを《その他1》《その他2》と分類した。

石油の国際政治学の基本構図

★CIA FACTBIOOK 2021による。単位=千バレル/日)

 

  国名    原油生産量  世界     上海
         (18年推計) ランキング  機構
《OPEC》=A
サウジアラビア  10,425    03     ◎
イラク        4,613    04     ◎
イラン        4,251    06     ◎
UAE         3,216    08
クウェート      2,807    09     ◎
ナイジェリア     1,989    11
アンゴラ       1,593    14
ベネズエラ      1,484    16
アルジェリア     1,259    18
リビア        1,039    19
コンゴ        340    30
ガボン        196    35
赤道ギニア      127    38
  A計      33,339 

 

《プラス》=B
ロシア      10,759    02     ◎
カザフスタン     1,856    12     ◎
メキシコ       1,852    13
オマーン       979    21
アゼルバイジャン   798    23     ◎
マレーシア      647    27
南スーダン      150    39
ブルネイ       100    42
スーダン       95    43
バーレーン      31    61     ◎
 B計       17,267
 A+B計      50,606

 

《その他1》= C
アメリカ      10,962     01
カナダ       4,264    05
カタール      1,464    17     ◎
イギリス      1,000    20
ノルウェー     1,517    15
 C計         19,207

 

《その他2》=D
中国        3,773    07     ◎
ブラジル      2,587    10
コロンビア      863    22
アゼルバイジャン   798    23
インドネシア     772    24
 D計        8,793
 C+D計      28,000

そういうわけで、米国の大統領がサウジに行って皇太子に頼めば何とかなるというものではないのが原油需給である。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • “裸の王様”と化した米国の大誤算。従うのは日本だけという情けない現実
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け