世界的なエネルギー価格上昇に各国が頭を悩ます中、10月5日に原油を減産することで合意したOPECプラス。7月には自らサウジアラビアを訪れ原油増産を訴えたバイデン大統領ですが、産油国が出した答えは正反対のものでした。このような状況の背景には、どのようなパワーバランスが働いているのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、米国とサウジの特殊な関係を紹介するとともに、バイデン大統領が理解していなかったと思われる「石油をめぐる国際政治学」をレクチャー。その上で、世界の変化について行けないアメリカと、彼らへの追従路線を取り続ける岸田政権を批判しています。
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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年10月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
なぜサウジもインドもバイデンの言うことを聞かないのか/米国は“裸の王様”化して自分の立ち位置が分からない
10月5日に開かれた「OPECプラス」の閣僚級会合は、11月から来年12月までの13カ月間にわたり200万バレル/日の原油減産を実施することを正式に決定した。
バイデン米大統領は、対外面では、減産による原油価格の上昇でロシアの収入が増え戦費の調達がたやすくなることを警戒すると共に、内政面では11月中間選挙目前にこのような決定が出て米国内のガソリン代の高騰への不満が抑えきれなくなることを恐れて、去る7月16日にサウジアラビアを訪問、事実上の最高権力者であるムハンマド皇太子と会談してOPECのリーダーであるサウジが原油増産に踏み切るよう働きかけた。確約は取り付けられなかったものの、それなりの感触を得た〔と思った〕バイデンは会談後、「世界の需要を満たすのに十分な供給を確保する必要性について意見が一致した。今後数カ月で起こることを楽しみにしている」とまで述べたのだったが、数カ月後に出た結論は真逆で、彼の面子は丸潰れとなった。
10月15日付ニューヨーク・タイムズが論説欄の1ページを割いて「米国がサウジアラビアと訣別する時が来たのか?」と問いかけたのも当然の、米国にとっては大きな出来事だった。
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