人を“不幸”にさせる「異常な能力」を持った鳩山邦夫と上杉隆の苦悩

Memory loss due to dementia or brain damage. Side profile of a woman losing parts of head as symbol of decreased mind function.
 

「みんな忘れたふりをしていると思うだろう。だがな、本当に覚えていないんだ。彼らのことは馬鹿にみえるかもしれないが、実際この世の中、彼らの方が普通で圧倒的な多数なんだ。俺も若いころそれで苦労した。いいか、鋭すぎると自分に返ってくるぞ。だから、上杉な、ああやって議論になったときは『逃げ道』を残しておいてやれ。結局は同じ仲間なんだ。追い込んで追い込んで行き場を奪ってしまえば、必ず仕返しされるぞ」

映画『レインマン』の主人公は、サヴァンシンドロームの「患者」である。鳩山邦夫氏も同じ症候群だと言われていた。実際、大臣時代、文部省や労働省の大臣レクの際には、鳩山さんだけは秘書官、審議官のみならず、官房長から局長、課長までがずらっと並び、レク中の大臣からの質問に対して準備をしていた。当時の文部官僚もこう話していた。

「最初、大臣は用意された100枚にも及ぶ分厚い資料を強烈な速さで捲っていきます。ところどころに赤ペンで雑にしるしをつけて5分くらい、その間私たちはずっと黙ってみています。それで、ぱんっとペーパーを閉じると、『○○局長、平成元年の中教審では○○と決まっていたはずだが、なぜ今回の…』『○○課長、今回の労働基準法改正案では、前回のペーパーで改定されていた部分が削除されているが…』と質問を開始するんです。いや、あんな大臣は後にも先にも鳩山大臣だけです」

国会での答弁中も、鳩山大臣はペーパーをみない。レク中に瞼に焼き付けて、一瞬で文書ごと記憶してする。それはまさに写真のような正確さで彼の脳に記憶され、それを引き出すだけなのである。

当時の官僚たちのほとんどが東大など旧帝大出身者であり、彼らも頭が良い。だが、その官僚たちが別格扱いをしなくてはならないほど、鳩山大臣の記憶力はずば抜けていた。

「俺も記憶についてはみんなと大差なく、覚えているのが普通だと思っていたんだが、世間の大半の人間はそうではない、とずいぶんと後になって気づいたもんだ。田中角栄先生(鳩山邦夫氏は田中角栄秘書)にも『邦夫君、君はいろいろと持っているものが他人とちがうのだということを理解しなくてはならんよ』と指摘されて、注意されたしな」

鳩山氏ほどではないが、この記憶力こそが、現在の私の社会的人間関係を壊しているようだ。決して記憶力に対する自慢をしているのではない。意識せず、記憶力が紛争の種になってしまうのだ。

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