総務省の聞き方が雑。「非常時事業者間ローミング」の身も蓋もない議論

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今年7月のKDDIの大規模通信障害などで、にわかに議論が活発化した緊急時の事業者間ローミングの問題。10月25日の会合に登壇した警察、消防、海保からは「呼び返しが絶対必要」など、硬直した意見が出るのみだったと、旗振り役の総務省の仕切りの悪さを指摘するのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、有識者が示した「新たな緊急通報の仕組みづくり」を大いに議論し、LINEアカウントを利用するなど、今すぐやれることは全てやるべきと訴えています。

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緊急通報ローミング問題、「呼び返し」は必要不可欠か──LINEアカウントなど「緊急通報の新たなあり方」も検討していくべき

総務省は10月25日、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会(第3回)」を開催した。今回は警察庁、消防庁、海上保安庁が登壇し、「呼び返し機能」について突っ込んだ議論が行われた。

緊急通報では、電話がかかってきた場合、通話が切れた時に折り返す「呼び返し機能」が必須となっている。万が一、キャリアのコアネットワークが落ち、ローミング接続となった場合、呼び返し機能が提供できるのか、提供しなくても許されるのかが、今回の検討会のテーマとなっている。

しかし、警察庁、消防庁、海上保安庁とも「ローミング時も呼び返し機能は絶対に必要」という主張となっていた。また、「事業者間ローミングを実現すべき。しかもフル機能で」という要望も上がっていた。

本来であれば、呼び返し機能がなくてもなんとかなるのか、という話なのだが、総務省から「必要か、否か」と聞かれれば、当然、「必要」と答えるわけで、そもそも総務省の聞き方が間違っている。

また警察庁からは「コアネットワークが壊れないような対策をしてほしい」という要望があった。そりゃ、コアネットワークが壊れないのが理想なのは当然なのだが、コアネットワークが落ちた時にどうローミングを実現するかが、この検討会の趣旨であり、議論がかなり噛み合っていない感じもあった。

そんな中、まともだと感じたのが、有識者からの指摘だ。「この検討会で議論するテーマではないかもしれないが、緊急通報の新たな仕組みづくりが必要なのでは」という意見があったのだ。

ぶっちゃけて言えば、この時代、音声通話のみで緊急通報を提供するという考えはそもそも古いのでは無いか。これだけ無料メッセージアプリ「LINE」が普及し、日本でスマートフォンを所有しているほとんどの人が使っているのだから、警察庁、消防庁、海上保安庁がLINE緊急通報メッセージアカウントを作り、LINEで緊急通報を受けるようにすればいい。

本人確認がとれているアカウントのみから緊急通報を受けるようにすれば、いたずらも防止できるし、呼び戻しも問題ないはずだ。ただ、LINEを使うとなると「海外にサーバーがあるぞ!」という指摘も出てきそうで、このあたりがLINEのなんとも残念なところだったりする。LINEが不安なのであれば、LINEに加えて、+メッセージでも緊急通報アカウントを作ればいい。

別の有識者からは「海外では緊急通報を発信できるアプリがあるぞ」とか「日本でも聴覚障害者向けに緊急通報できるアプリがある。それを一般開放すればいいのではないか」という意見もあったが、わざわざ、いつかけるかわからない緊急通報のために、新しいアプリをインストールするなんて面倒なことは誰もしない。ならば、すでにインストールされているアプリを有効活用すればいいのではないか。

事業者ローミングの実現は時間もかかるしお金もかかる。この先、どんな通信障害や大災害が起こるか全く予想できず、運用ルールを決めるのも困難だ。事業者ローミングの準備を進めつつ、警察庁や消防庁、海上保安庁はLINEや+メッセージのアカウントを作ればいいし、キャリアはWi-Fi Callingに対応していくべきだ。

とにかく、関係各所が、今すぐにでもやれることは全てやり、どんな状況が起こっても、一人でも多くの命を救えるように準備していくべきだろう。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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