日本は侵略などされない。脅威を捏造し「防衛費倍増」する国民ダマシ

 

旧ソ連じゃなければどこなんだ?

冷戦の終わりと共にソ連の脅威が消滅して、しからば冷戦後の極東情勢の中で、上述のように「どこの国の、どの部隊が、どういう様態で侵略してくる蓋然性が高いか?」が改めて問われることになった。が、日本はこの根源的な問いかけに真面目に立ち向かおうとはせず、何とはなしの「北朝鮮が怖い」「中国は危ない」というマスコミが醸し出す気分に身を委ねるばかりで、本当に日本が直面する軍事的脅威があるとすればそれは何なのかを分析することを怠ってきた。

《脅威の横滑り》

まず何よりも、北朝鮮や中国が「脅威」だと言っても、そのどちらかもしくは両方が軍事力の総力を挙げて日本に上陸侵攻し直接軍事占領を目論むという事態は、100%どころか200%もあり得ない。理由?彼らがそうすることに何のメリットも何の意味もないからである。

そこで外交・防衛当局は、「そうは言っても奴らは危ないんだ」という理由を苦心惨憺探し回って、「北朝鮮が国家崩壊した場合に、一部は武装した難民が日本の離島に押し寄せる」とか、「中国は台湾有事の場合に必ず尖閣諸島を獲りに来るに決まっていて、そうなると与那国島も石垣島も宮古島も攻められるに決まっている」とか、ありもしない脅威シナリオを世に振り撒いて、それを口実に防衛予算の大幅増額を要求し続けてきた。仮に難民が押し寄せるとか尖閣が巻き込まれるとかいうことがあったとしても、それは、誰が考えても分かることだと思うが、精鋭機甲師団による正面切った渡洋上陸作戦とは全く量も質も異にする低レベルの脅威でしかない。

それで当時私は、このような「ソ連は敵でなくなっても、ほら北朝鮮が怖いだろう、中国も危ないだろう」という情緒にのみ訴える非科学的な脅威論の心理操作を《脅威の横滑り》と呼んで揶揄した。

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