「日本の5G」はなぜ韓国、台湾、中国に大きく引き離されたのか?

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2020年3月にサービスが開始された5G。キャリアもメディアも5G5Gと盛り上がっていた割には、日本の5G端末の普及率はなかなか上がらず、サービスエリアの拡充も遅れているようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、アメリカはもちろん韓国、台湾、中国にも大きく遅れてしまった理由を考察。日本の通信政策の失敗が招いた事態と指摘し、「通信後進国になってもおかしくない」と政策転換の必要性を訴えています。

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「ニッポンの5G」は韓国や台湾、中国に大きく出遅れ──キャリアが再び設備投資を活発化させる日は来るのか

12月22日、エリクソンは11月に発表した「エリクソンモビリティレポート」についての解説を行った。今回のレポートでは5Gの契約が全世界で2022年末までに10億、2028年には50億に達する見込みであると明らかにされた。特に北米と北東アジアでは2022年末までに5G加入数の割合が約35%に達すると予想されている。

一方で、日本においての5G普及は他国に大きく後れをとっていると指摘する。日本におけるSub-6の5G基地局密度やスループットは韓国や台湾、中国に比べて見劣りするデータとなっているのだ。KDDIの髙橋誠社長は「4G初期の日本は世界で1番手や2番手だったが、5Gでは10番手ぐらいではないか」と危惧するほどだ。

この遅れについてエリクソン・ジャパンの藤岡雅宣氏は「一番の理由は設備投資が遅れている」という。風圧や耐震関係など、基地局建設における制度の問題、さらには新型コロナウィルス感染拡大によりテレワークが増えたことで、モバイルトラフィックがあまり増えていない影響もあるようだ。

また、日本においては各キャリアに割り当てられたSub-6が、衛星の地上局と干渉していたため、思うように基地局を建設できなかった点もありそうだ。政府は「Beyond5G、さらには6Gに向けて国際競争力を上げていく」と旗振りをしているが、5Gにおいては、すでにアメリカだけでなく、韓国や中国、台湾に大きく引き離されている状態だ。

各キャリアの決算資料などを見てると、確かに設備投資額が昨年や一昨年に比べて減少しているのがよくわかる。政府による値下げ圧力の影響で通信料収入が減少しているため、設備投資を抑制していると思われる。

本来であれば、5Gスマートフォンが普及し、使い放題プランのユーザーが増えて、収入が増加し、さらに設備投資が加速されるというのが理想であった。しかし、端末割引を規制したものだから、5Gスマートフォンへの乗り換えが進まず、結果として、4Gの中古スマートフォンに目が向くようになってしまった。

ここ数年の通信政策は明らかに失敗しており、このままでは6Gに向けて、日本は取り返しのつかない状態まで追い込まれる可能性が高い。6Gに向けて、日本が「通信後進国」になってもおかしくないのだ。

5Gスマートフォンを持つユーザーが「5Gにして良かった」と思えるような体験を得られるぐらいの設備投資ができて、5Gネットワークを充実させられるような、通信政策の転換が必要だろう。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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