ロシアのウクライナ軍事侵攻や北朝鮮の度重なるミサイル発射実験など、国際社会が大きな危機に直面した2022年。今年、その混乱はさらに広がる可能性が大きいようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、国際政治学者が年始に発表した「2023年世界の10大リスク」の内容を紹介。その中でも特に高野さんの目を引いたという、「大混乱生成兵器」なるリスクについて詳しく取り上げています。
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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年1月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
国際政治学者イアン・ブレマー「2023年世界の10大リスク」をどう読むか。凡庸な中に見えた「意外な着眼点」
国際政治学者=イアン・ブレマーが主宰する「ユーラシア・グループ」は毎年正月に世界情勢予測「今年の世界のリスク・トップ10」を発表する。これが始まった10数年前には英語版だけだったが、今では日本語版のサイトも開かれて参照しやすくなった。URLは以下だが、カタカナで「ユーラシア・グループ」と検索すればすぐに出てくる。
今年の「10大リスク」
イアン・ブレマーによる今年の「10大リスク」と本誌によるその簡略な要旨は以下のとおり。
《2023年世界の10大リスク》
1 ならず者国家ロシア
屈辱を受けたロシアは、グローバルプレーヤーから世界で最も危険なならず者国家へと変貌し、ヨーロッパ、米国、そして世界全体にとって深刻な安全保障上の脅威となるだろう。
2 「絶対的権力者」習近平
毛沢東以来の比類なき存在となった習近平国家主席は、コロナ対策、経済政策、外交で失敗しても誰の意見にも耳を傾けない。
3 「大混乱生成兵器」
今日、米国は、民主主義を弱体化させるツールの主要な輸出国となっている。その結果、人工知能(AI)の技術的な進歩が社会の信頼を損ない、デマゴーグや権威主義者に力を与え、ビジネスや市場を混乱させている。2023年は、社会における破壊的テクノロジーの役割の転換点に。
4 インフレショック
21年に米国で始まり、22年に世界的に広まったインフレショックは、23年には大きな経済的・政治的影響をもたらすだろう。世界同時不況の主要因となり、社会的不満と政情不安をあちこちでかき立てるだろう。
5 追い詰められるイラン
核合意復帰が見込めない中、イランとイスラエルは再び激突するだろう。イスラエルのネタニヤフ新首相は、サイバー攻撃、主要な核施設や重要インフラの破壊工作などの活動を強化する。イランは、シリア、レバノン、イラク、イエメン、ガザ、そして海上からの攻撃でイスラエルに報復する。
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