ロシアとウクライナの間で繰り広げられる戦いにおいても、これまでまだ停戦を実現するという成功は収めていませんが、両国に対して確実に物言うことができる立ち位置を獲得していますし、ロシア・ウクライナ双方に対して支援を行っているという“両サイドに賭ける”という姿勢は、分断が鮮明化し、混乱が深化する現在の国際情勢において、非常に強力かつ稀有な立ち位置を可能にしています。
ウクライナの隣国であり、アラブ諸国、欧州、北アフリカ、中央アジア、イランなどを結ぶハブに位置するという地政学的な特性も最大限活かし、国連と共に、黒海の穀物輸送のアレンジを監視する立場を得ることで確実に国際情勢におけるパワーハウスに復活しようとしています。
それがかつてのオスマントルコ帝国の再興に向かっていくことが出来るか否かは、今年行われる選挙の結果次第と言えるかもしれません。もしエルドアン大統領が負け、退陣を余儀なくされたら、恐らくトルコはまた世俗的な政治体系(secular politics)に回帰し、欧米諸国に懐柔されることになってしまうかもしれません。
エルドアン大統領に対しては好き嫌いがあるかと思いますが、トルコを国際情勢におけるパワーハウスに引き上げることができるのは、現在の混迷を極める国際社会に対してはエルドアン大統領しかいないのではないかと(長くお付き合いがある立場から見ても)私は思います。
ウクライナ問題の解決策について話し合うためにも、また全体的な国際情勢のグランドデザインを描くためにも、しばらくはトルコ、およびエルドアン大統領の動静から目が離せません。
以上、国際情勢の裏側でした。
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