秋から冬にかけて競技シーズンを迎える駅伝。とかく駅伝好きで知られる日本人ですが、なぜここまでの人気を誇るに至ったのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』ではジャーナリストの伊東森さんが、その意外な理由を解説。さらに駅伝が日本の陸上競技会に与え続けている大きな弊害を明らかにしています。
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“ガラパゴス”国家の象徴「駅伝」その弊害
お正月の風物詩といえば駅伝。毎年1月1日の元日には、ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競走)が、そして2日と3日には箱根駅伝は開催される。
しかしながら、“世界に誇る”ガラパゴス国家の日本でだけ、駅伝が開催されているのはなぜか。
駅伝という陸上競技は日本にしか存在しない。では、なぜ日本人はこんなに駅伝に熱狂するのか。生島淳氏は、スポーツ全般として個人競技よりも団体競技を好む日本人の国民性のためであると指摘する(*1)。
アメリカやイギリスなど陸上の強豪国や競技人気が高い国で、そもそも陸上が“団体競技”として見なされることはない。陸上=個人競技であり、
「選手が自分の体、能力ひとつで勝負するところに魅力的」(*2)
と考えられている。
ただ、話は結構、単純だ。なぜ、これほど日本人は駅伝が好きなのか、それは日本中のあらゆる駅伝はメディアが主催する「メディアイベント」であり、結果、その不都合を伝えるマスコミも皆無であること。
そのため、日本人は“駅伝教”を信仰するようになった。
目次
- 駅伝の歴史 なぜこれほど注目を集めるのか “神事“としてのスポーツ
- 日本の陸上選手がマラソンで勝てない理由
- 箱根駅伝の出場チームの選手20%が疲労骨折を経験 スタッフはオムツ着用
■主な駅伝の主催、共催、後援に名を連ねるマスコミ各社
1月
- 全日本実業団対抗駅伝(毎日新聞・TBS共催)
- 箱根駅伝(読売新聞社共催、報知新聞社・日本テレビ放送網後援)
- 全国都道府県対抗女子駅伝(京都新聞社主催、NHK共催)
- 全国都道府県対抗男子駅伝(京都新聞社主催、NHK共催)
2月
- 全日本大学女子選抜駅伝(テレビ東京主催、日本経済新聞社ほか後援)
10月
- 出雲全日本大学駅伝(フジテレビ・産経新聞社・サンケイスポーツ・ニッポン放送後援)
11月
- 全日本大学駅伝対校選手権(朝日新聞社・テレビ朝日・名古屋テレビ放送主催、日刊スポーツ後援)
- 全日本大学女子駅伝(読売新聞社主催、日本テレビ放送網・報知新聞社後援)
12月
- 全日本実業団女子駅伝(毎日新聞社・TBS共催)
- 男子全国高校駅伝(毎日新聞社主催)
- 女子全国高校駅伝(毎日新聞社主催)
駅伝の歴史 なぜこれほど注目を集めるのか “神事“としてのスポーツ
駅伝の起源は1917年にまで遡る(*3)。京都の三条大橋の袂に「駅伝発祥の地」という記念碑が。
1917年4月27日、この三条大橋を出発して東京の上野の不忍池までの23区間、約508kmの距離で、日本で最初の駅伝大会が行われた。それから3年後の1920年には第1回箱根駅伝が開かれる(*4)。
では、なぜこんなにも駅伝が注目を集めるのか。ひとつのきっかけとなったのは箱根駅伝が始まって70年目の1987年から日本テレビによる生中継が始まったことと関係する。
他方、駅伝を考案した金栗四三は、
「そのころ長距離リレーになんとか名前をつけようということになり、武田千代三郎という伊勢神宮に関係のある皇學館長が駅伝という古式ゆかしい名前を編み出したと思う。そして大正9年の第1回から駅伝を始めたわけだ」(*5)
と語り、駅伝と神道との関係を語っていた。
事実、箱根駅伝は、大手町の「将門の首塚」から「関東総鎮守箱根大権現」と呼ばれた箱根神社を結ぶ。出雲全日本大学選抜駅伝のスタートは出雲大社。
全日本大学駅伝対校選手権大会も、名古屋の熱田神宮を出発して、ゴールは「駅伝」に縁のある伊勢神宮だ(*6)
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