「代行ビジネス」報道で問題視され株価急落。農場従事の障がい者雇用支援の実態とは?

shutterstock_1667805034
 

今年1月、共同通信が障がい者雇用を「代行」するビジネスが急増していると報じ、名指しされた企業の株価が暴落するなど、注目を集めました。メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者で、生きづらさを抱えた人たちの支援に取り組む著者の引地達也さんは、農業に従事することで実際に「助かっている」障がいをもつ要支援者たちがいると、この問題の難しさを説明。障がい者の法定雇用率を3年後までに段階的に引き上げる案もあり、理念なき企業のための「数合わせ」目的のサービスとなっている部分をどう変えていけるか、熟考する必要があると伝えています。

この記事の著者・引地達也さんのメルマガ

初月無料で読む

障がい者の農場従事を「代行ビジネス」と問題視。指摘された企業の株価暴落、再構築は期待できるのか?

障害者雇用促進法に基づき企業に義務付けられている障がい者の雇用割合である法定雇用率が現在の2.3%から2026年度に2.7%に引き上げられる見通しとなった。

厚生労働省は厚労相の諮問機関「労働政策審議会」の分科会に来年4月に2.5%、26年度に2.7%と段階的に引き上げる案を提示。この0・4ポイントの引き上げ幅は、法定雇用率が制度化して以来、最大となる予定で、企業に対して、障がい者雇用の推進をさらに促す強いメッセージとなりそうだが、同時に数字合わせの事例や「理念なき障がい者雇用」の増加も懸念される。

自社で雇用した障がい者を契約に基づく農場で業務に従事させるビジネスも「代行ビジネス」だと問題視され、障がい者雇用の目的を見失っているケースも増加している実態もある。

雇用率引き上げだけではなく、私たちは社会全体で障がい者雇用に対する正しい認識を確認する必要がありそうだ。

「問題視」と書いた事例は、障がい者雇用を「代行」するビジネスだと指摘された問題だ。今年1月、共同通信はある企業の実名をあげて「法律で義務付けられた障害者雇用を巡り、企業に貸農園などの働く場を提供し、就労を希望する障害者も紹介して雇用を事実上代行するビジネスが急増している」と表現したことで、指摘された企業の株価は暴落した。

この企業は即座に反論したが、この問題は国会でも取り上げられ、厚労省も対策を講じる旨の発言があったことから、株価にも影響し、問題は一般にも知られるようになった。

これは障がい者雇用の枠組みで入社させた社員をその企業の業務を行うのではなく、契約した企業が運営する農園などの業務に従事させる仕組みで、障がい者雇用を達成させるための数字合わせとの批判があるのは確かであるが、実際には助かっている当事者もあり、評価はなかなか難しい問題でもある。

このビジネスは全国で広がっており、営業も活発だ。障がい者雇用の採用や当事者との業務のやり取り、コミュニケーションで悩む企業にとってはうれしい仕組みとして、私にも営業を受けた企業から「この仕組みにのっていいのだろうか」との問合せが多く寄せられてきた。

障がい者にとっても「働きやすい」とのポジティブな反応が強調されているから、なおさらに「ウインウイン」のビジネスとの印象も伝わっている。

この記事の著者・引地達也さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 「代行ビジネス」報道で問題視され株価急落。農場従事の障がい者雇用支援の実態とは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け