統計によると、昨年6月時点で企業で働く障がい者は約61万4000人で、19年連続で過去最多を更新している一方で、法定雇用率を達成している企業は全体の48・3%で半分以下。未達成企業に対する調整金の支払いよりも、企業の社会的役割が注視され、企業価値に直結する未達成企業名の公開に頭を悩ませる。だからこそ、農園で働く仕組みは活気づいてきたのだ。
私は農園で働きたいという当事者からの相談、この仕組みを取り入れようとする企業からの相談、このビジネスを始めようとする企業の相談を聞いてきた。
当事者へは実習をしたうえで、環境や人間関係などに支障がなく、長く働き続けられそうであれば、個人の意思を尊重している。企業に対しては、農業でも自社の製品や活動に関わりのあるものであれば、その雇用は一体化したものとしてかかわっていくべきで、場合によっては新しい事業創出の可能性もあるので、その点を重視するよう注文した。
しかし、これらを活用するのは積極的に関わっていこうとしない、効率的に雇用率を満たせばよいと考えている企業が多い。だから問題なのである。私は仕組み自体を非難するつもりはないのだが、一部は数字合わせ企業へのサービスと化したことを問題視したい。
農業を仕事にすることで、都会のオフィスでは活性出来なかった自分を取り戻すケースもある。農業でも「関わって、対話して、一緒に仕事をして」の中で働ければよいのだが、これを構築するには、最初から障がい者雇用の意味を熟考し、築き上げていくのが賢明だろう。そうしたら「代行」と呼ばれない新しい形になると思うのだが。
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