退職手続き中に突然「退職撤回!」と言い出した社員は辞めさせてもいいのか

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会社が勝ちました。その理由は以下の通りです。

・面談の際に、退職の意思を述べるにとどまらず、退職することを前提とした打ち合わせを行っていた
・病院は面談をした事務部長に、退職の承諾の意思表示をする権限を与えたのであるから(事務部長が)承諾したのは有効である
・病院の就業規則は、退職手続きにおいては書面による申出を予定しているが、使用者と労働者の個別の同意は就業規則に優先するものであるから、口頭での合意による労働契約の終了は妨げられない

いかがでしょうか。

ここで1つ注意点です。

今回、私がお伝えしたいのは「退職届をもらわなくても大丈夫ですよ」ということではありません。

むしろ逆です。

今回の裁判では結果として退職届が無くても有効にはなりましたが、もらっていなかったことで裁判にまでなってしまったとも言えるでしょう。

退職届をもらっておいたほうが良いのは間違いありません。

実は今回の裁判例でも事務部長が面談のときに退職届の書類を医師に渡していました。

ところが、医師が印鑑を持っていなかったため捺印をして、後日郵送することになっていたのです。

退職届に印鑑は必須ではありません。もしみなさんがこの事務部長の立場であったら自筆のサインと、もし可能であれば拇印でももらってその場で回収すべきでしょう。

また、退職の事実が認められた理由に「退職することを前提とした打ち合わせ」があります。

具体的には、この面談で退職後の健康保険の任意継続についての確認等を行っています。

これも重要なポイントです。

別の裁判でも「年休の残日数を計算して退職日を決めた」「保険証や社員証の返却手続きを説明した」などが退職の事実が認められた理由としてあげられています。

万が一の場合には退職の意思の承諾だけでなく、これらの事実があればより認められやすくなるでしょう。

退職の撤回が問題になる場面というのはそう多くは無いと思いますが万が一の場合にあとからトラブルにならないよう慎重に行っておきたいですね。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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