タモリ「最近の日本語」騒動に、大手新聞の元校閲センター長はどう反応したか?

 

「忖度」が「媚びへつらい」になる違和感

「とか」という言い回しについて、僕はこれを「とか弁」と呼んでいました。だから、こうしたことばに目くじらを立てる必要がないのかもしれません。

ただことばの意味を意識することなく、いつも身を守る薄い衣をまとっていると、相手を忖度し自己防衛する言語が「日常のあるべき姿」になって、正しく主張したり反論したりすることができなくなるのではないか、という心配が頭をもたげます。

相手を傷つけず、自分も傷つかないようにするため、NOと言えない、あるいは言わない。それだけでなく、YESも言えないし、言わない。だからディベートが成立しない。そのくせいったん、意見をぶつけると相手の言うことを理解できず、理解しようともしない。とことん潰しにかかってしまったり、意味のないことばを重ねてごまかしたりする。「忖度」ということばを「媚びへつらい」の意味に変えてしまうような居心地の悪さが垣間見えるからです。

希薄になる言論 の先にあるもの

こうなると、民主主義の基本にある言論が薄まってしまう気がするのです。これでは世界に打って出ることもできないし、イノベーションも起こらない。僕はそんな気がしているのです。

タモリさんの考えは窺い知ることはできません。

しかし「とか」や「~なります」ということばに対して、言いようのない居心地の悪さを感じているのではないか。それが「俺怒っているわ」ということばになって出たのではないか。

そんなことを考えながらラジオを聴いていたのでした。

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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