近づく北朝鮮“核搭載”ミサイル発射。今こそ日本がロケット技術を活かした「核武装」を検討すべき理由

2023.02.28
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昨年に続いて、止むことがない北朝鮮からのミサイル発射。アメリカが「世界の警察」から撤退して久しい昨今、中国の台頭によるパワーバランスの変化によって、アジアや日本の安全保障が脅かされようとしています。こうした北や中国の動きについて解説するのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。日本の次世代大型ロケット「H3」の試験機1号機が17日、鹿児島・種子島宇宙センターから打ち上げられる予定も「中止」となったことが大きな話題となりましたが、アッズーリ氏は周辺国の動きを受けて、日本が力を入れているロケット技術を活かした「核武装」を検討する時期に入ったのでは、と韓国の世論調査の結果などを示しながら提言しています。

ミサイル発射を繰り返す北朝鮮。日本は今こそ「ロケット技術」を生かせ

今年に入っても北朝鮮によるミサイル発射が止まらない。自衛隊や韓国軍によると、北朝鮮は2月20日早朝、東岸沖の日本海に弾道ミサイル2発を発射した。1発目は最高高度約100キロ、飛行距離約400キロ、2発目は最高高度約50キロ、飛行距離約350キロだったとされる。

北朝鮮は18日にもICBM大陸間弾道ミサイルを発射し、北海道の渡島大島の西約200キロの日本海に落下するなど緊張が続いている。20日のミサイル発射で確認されているだけで今年に入り3回目となる。北朝鮮による昨年のミサイル発射は異例のペースだった。外務省の情報によると、北朝鮮は1月に6回、2月に1回、3月に3回、5月に4回、6月に1回、9月に3回、10月に5回、11月に5回、12月に1回、計 29回(55発)弾道ミサイルを発射したとされる。北朝鮮を巡る情勢が今後さらに悪化すれば、今年の発射回数が昨年を上回るだけでなく、本気で「核実験」を強行する恐れがあるだろう。

北朝鮮のミサイル発射「異例ペース」2つの理由

北朝鮮が異例のペースでミサイルを発射する背景は大きく2つの理由がある。

1つは対立国との関係悪化である。トランプ政権時代、米朝関係は当初は軍事的緊張が高まったものの、平昌五輪を境にその後は米朝の間で3回も首脳会談が行われ、米朝関係の改善が期待された。

だが、バイデン政権になった途端、米朝関係は180度変わった。バイデン大統領はオバマ政権同様に戦略的忍耐を徹底し、バイデン政権が発足してから2年が経過するが、米朝関係は停滞し続けている。バイデン政権は対中国を最優先してきたが、ウクライナ侵攻によって対ロシアにも時間を割く必要性に迫られ、北朝鮮問題の比重は下がるばかりだ。米国との国交正常化や体制保障を求める北朝鮮は、軍事的挑発をエスカレートすることで、バイデン政権を交渉のテーブルに引きずり出そうとしている。

もう1つは、昨年5月に韓国でユン大統領が誕生したことである。ユン政権の対北政策はムン前政権と全く異なり、日米との結束を強化することで北朝鮮に厳しい姿勢を貫くことだ。ユン政権下では、米韓合同軍事演習が再び活発になり、今年に入っても韓国の李鐘燮国防相は1月11日、北朝鮮による核兵器使用を想定した米韓合同の机上演習「拡大抑止手段運営演習(TTX)」を2月に米国でおこなう方針を明らかにしたが、これは22日に実施された。こういった米国と韓国の政権の対北姿勢は北朝鮮の不満や憤りを強めるばかりだ。

米国の衰退、中国の台頭。世界で崩れ始めたパワーバランス

また、国際政治における「力の変化」もある。簡単に説明すれば、冷戦終結直後から20年あまりは超大国米国を一極とする世界構造で、当時米国は世界の軍事力半分以上を独占してきた。しかし、中国の台頭が顕著になり、オバマ政権やトランプ政権の時、米国は既に世界の警察官からの立場から退くことを表明した。

そして、米中の力関係は年々拮抗し続け、今後は中国が経済力で米国を追い抜くとの見方もあるが、明らかに欧米陣営の影響力は衰退し続けている。昨年以降のロシアによるウクライナ侵攻のように、米国と対立するという意味では北朝鮮も中国やロシアと同じであり、北朝鮮にとって挑発的行動を取りやすい国際環境が生じているともいえる。北朝鮮には、「ミサイル発射を繰り返しても非難するのは米国や日本、韓国、その他の一部の欧米諸国くらいだ。中国やロシアの暗黙の了解がある」との狙いもあろう。国際構造の変化により、今後、さらに北朝鮮による挑発はエスカレートする恐れがある。

強気な金正恩の妹・金与正「太平洋を射撃場にする」

このような暗い見通しの中で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹で党副部長の金与正氏は最近、太平洋を射撃場にすると警告した。射撃場にするとは事実上打ち上げられたミサイルが日本列島の上空を通過することになるが、日本としては国家の平和と生存、繁栄を維持するため、本気で「核武装」を検討する時期に入っている。

ちょうど1年前、多くのロシア専門家は「ウクライナ侵攻はない」と主張してきた。しかし、侵攻は現実のものとなった。独裁国家の指導者は何をするか分からないのだ。今後は北朝鮮が小型核をミサイルに搭載して発射するというシナリオもあり得るだろう。そうなれば、日本の安全保障は本当に脅かされることになる。

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