このままでは国が滅ぶ。東京都「高校内予備校」で判明した教育の制度的大欠陥

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2023年度から一部の都立高校での開講が予定されている「高校内予備校」。費用は教育委員会が全額負担、大学進学を支援するため予備校や学習塾の講師を学校に招いて講習を行うという取り組みですが、その背景には大きな問題が存在しているようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、プリンストン日本語学校高等部の主任を務める米国在住作家の冷泉彰彦さんが、公教育の現場に民間業者を入れざるをえない理由を解説。日本の公立学校が抱える制度的欠陥を指摘しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年2月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上、2月分のバックナンバーをお求め下さい。

公立校の教師は無能なのか。東京都「高校内予備校」開設の問題点

東京都の教育委員会(都教委)は新年度から民間の塾講師を都立高校に招いて受験指導を行うことを決定したそうです。つまり「高校内予備校」の開設というわけです。その費用は全額を都教委が負担するということで、実施校は一部に限られるそうですが、教育費に苦しんでいる家庭には救済になるなどと報道されています。

この事例ですが、教育者の藤原和博氏が杉並区の区立中学の校長として行った「中学での塾の開講」のことを想起させます。藤原氏は「夜スペ」と銘打って実施して話題になりました。

ただ、よく見てみると今回の「高校内予備校」と、「夜スペ」を比較すると単に高校と中学の違いということだけでなく、そもそも企画として正反対だということが指摘できます。

「夜スペ」を導入した藤原和博氏の深謀遠慮

まず「夜スペ」は、勉強が出来すぎて公立中の授業が退屈という層を対象に行われました。具体的には、今もそうですが東京の場合は中学入学段階で私立一貫校を受験するのが流行しているわけですが、志望校選択に失敗したとか、紙一重の運の悪さなどで「私立に行けなかった」生徒が一定程度いるわけです。

個人的なことで恐縮ですが、私は大昔、大学生の時に学生有志で運営している塾で講師をしていましたが、その際に「間違って中学受験で落ちてしまい、高校受験の際にエリート校に挑戦しなくてはならなくなった1年生」を教えたことが何度もありました。失礼ながら13歳にして老成し、どこか斜に構えつつ易しい問題をバカにしたりしている姿には痛々しさを感じたものです。

藤原氏はこの層を学校コミュニティに包摂することで、全体を活性化するという深謀遠慮と言いますか、教育者として自然な発想から「夜スペ」を導入したのでした。

一方で、今回の「高校内予備校」はとにかく貧困家庭の大学進学率を上げたいという狙いでやっているもので、企画の方向性も意味合いも全く別のものです。

ちなみに、夜スペに関しては、悪質な中道左派などの政治団体から「学校内で利潤追求の塾に活動させるのは不快」だなどという中傷があり、藤原氏も苦労されたようです。

今回の「高校内予備校」に関しては、貧困層の救済ということから歪んだ政治的批判はないようですが、該当校の先生からは、「このために管理責任上休日出勤しなくてはならないのは負担」という声があるようです。

しかし、政治的に不快だとか、教師が管理するのが大変というような話は全くの些末な問題です。

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