企業が従業員を採用する際には、会社側がいろいろと自由に決定できますが、こと「解雇」関しては自由がありません。そこで採用時に必ず気にかけておくべきことは何か、無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社会保険労務士の飯田弘和さんが語っています。採用担当者は必見です。
採用面接時の「病歴確認」は問題ないのか?
会社には、採用の自由が広く認められます。
雇うか雇わないか、雇うとして誰を雇うか、どういった人を雇うかというのは、会社が自由に決定することができます。
しかし、一旦雇うと、解雇の自由は会社にはありません。そのため、雇入れた労働者が、何らかの病気を患っていることが後々判明し、その処遇に困るといったことが起きています。
雇用契約上は、労働者には、“債務の本旨に従った労務の提供義務”があります。要は、雇用契約に則って、きちんと働く義務があるという事です。
しかし、日本では、職種や業務内容の取り決めが曖昧であるため、病気を患っていてきちんと働けないような労働者であっても、配置転換等で働かせ続けることが可能かどうか等を検討しなければなりません。
ここで、「片山組事件」という有名な判例を要点だけ紹介します。
私傷病で治療中の従業員に対し、きちんと業務を行うことはできないと判断し、会社は休業を命じました。その間は無給でした。
これに対し、裁判所の判断は、“労働者の能力や経験からみて、実際に配置可能な業務があり、その業務への異動を本人が申し出ているような場合、それは労務の提供があったとみなされる”としました。
そして、休業中の賃金の支払いを命じました。
このように、たとえ私傷病であっても、その従業員を簡単に休業させたり、ましてや解雇することは、とてもハードルが高いのです。だからこそ、採用時の見極めが重要になってきます。
センシティブな問題だけに、採用面接時に、健康状態や病歴・既往歴を尋ねることを躊躇することがあるかもしれません。
しかし、採用後の配属や安全配慮等の必要性があれば、健康状態や病歴を尋ねることは問題ないとされています。
ただ、面接時に強制的に答えさせるのは適切ではないので、あくまで本人の同意を得た上で回答してもらい、同意を得られなければ、その事実を踏まえて採用の可否を判断すべきでしょう。
また、嘘の回答があった場合には、病歴詐称として、雇入れ後に解雇となり得ることも説明しましょう。回答は口頭ではなく、書面で求めた方が良いでしょう。
繰り返しになりますが、会社には、採用の自由はありますが、解雇の自由はありません。採用活動時には、ぜひ、このことを思い出してください。
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