統一教会問題とコロナ報道で露呈した「権力のイヌ」でしかない大マスコミ

 

ここまでが、私の認識していたことだが、本書のなかで有田芳生氏が、マスコミが統一協会からの抗議に委縮して、協会にとって差し障りのないコメントに終始するようになっていった様子を語っている。

2022年8月に朝の情報番組に出演した有田氏は、統一協会について「霊感商法をやってきた反社会的集団」と発言しているが、協会は、これを「事実ではない」として有田氏を名誉棄損で告訴。

反社会的集団だなんて、圧倒的事実じゃないかと思うが、協会とズブズブベッタリの政治からも圧力を受けていたテレビ局は、たちまち委縮したらしい。

有田氏は、決まっていたテレビ出演もキャンセルされて、現在まで出演オファーがない状態だという。ジャーナリストとして35年にも渡って統一協会の取材を続け、法的問題を熟知し、脱会の手助けなど最前線の生々しさを体験してきた人物であるにも関わらず、その有田氏だけを避けて、差し障りのない解説をするコメンテーターしか用意できない──それがテレビという腰抜けなのだ。

30年前、統一協会が桜田淳子や山崎浩子を広告塔にして、合同結婚式を行った際は、霊感商法によって多数の被害者が出ていることもセットで報道されていたので、私もよく覚えている。

ソウルのオリンピックスタジアムに、超大勢の新郎新婦がザザーッと並んで、王冠をかぶった教祖夫妻に祝福されている映像は、未成年の私でも「めっちゃ異様」と感じたし、身の回りの人たちもほとんど同じ感覚を共有していて、芸人のコントや、日常会話のなかでも、「ツボ買わない?3,000万円で」というような冗談をよく耳にした。そもそも、当時の統一協会の霊感商法では、逮捕者が出ており、犯罪として警視庁が認めている。

しかし、統一協会は、訴訟に勝つか負けるかなど関係なく、ひたすら言論活動を委縮させる目的で、抗議活動を行っているのだという。

1984年に霊感商法が話題となり、『朝日ジャーナル』が統一協会批判を展開した際は、朝日新聞東京本社に1週間で4万6,000本もの抗議電話が殺到したらしい。さらに、朝日新聞の社屋の隣にある国立がん研究センターや、向かいの築地市場にも大量の抗議電話が入り、ついには近隣一帯の電話回線がすべてパンクするという異常事態が起きたというから驚愕した。

命のかかった患者を抱えた医療機関にまで、問答無用で嫌がらせの電話をかけまくり、外圧を高めようとするのだから、考えることの下劣さとエゴイズムが凄まじい。

そして同時に、地域一帯の回線をパンクさせるほどの電話を、いっせいにかけまくってしまう、軍隊のような従順な信者を大勢抱えていることを考えると、そりゃ政治家にしてみれば、選挙の時こそ、その信者たちをボランティアスタッフとして抱え込んで、有権者への電話作戦を実行してもらいたいだろうなと簡単に想像がついた。

この抗議事件では、朝日新聞は「それ以上続けるなら裁判に訴えて記事にする」と告げ、めげずに批判記事を展開しつづける態度をとったが、その後は、協会を恐れて、根性を発揮するマスコミはいなくなったらしい。

それどころか、2012年4月には、TBS系『報道特集』が、統一協会の合同結婚式を宣伝するかのような番組を放送。しかも、本部広報局が、協会のご機嫌をとるようなメールを送信していたことも有田氏が暴いている。

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