統一教会問題とコロナ報道で露呈した「権力のイヌ」でしかない大マスコミ

 

また有田氏は、統一協会が、殺傷能力のある大量の武器を入手して武装化を企てていたことも詳細に語っている。この話はまったく知らなかったので、読んでいて、およそ現実とは思えないような感覚に陥り、勅使河原をはじめとする登場キャラの濃い「統一協会劇場」を眺めて楽しんでいた自分ののん気さが怖くなる内容だった。

警視庁や公安は、統一協会をオウム真理教と同様の「危険な団体」と認識しており、一時期は捜査もしていたが、それも政治圧力によって中断されたという。協会は、国会議員の秘書を養成するためのカリキュラムまで用意して(!)、かなり計画的に日本の政治家と一体化し、権力の中枢を手中に収めてしまったのだ。

すでに、少なくない人数の信者が、地方議員として活動しており、協会の教義を実現するために、儒教的な男尊女卑の感覚とセットになった家族観を盛り込んだ法令を通しはじめている。

国会議員も地方議員も、「神武天皇以来、例外なくつづく男系男子継承」などとコピペ文を述べていたら、「統一協会の教義にマインドコントロールされた、男尊女卑の反天皇の人」と指をさしても構わないんじゃないかと思う。

ここまでの事実をつかんでいるジャーナリストがいるのに、なぜマスコミは日本人の安全に関わる危険な事態を一切報道しないのか。

マスコミと言えば、司法・行政・立法の三権と並んで「第四の権力」として、政府に対する監視機能の役割を担う──という文言だけは、すらすらとどこかで習った記憶として出てくるが、現実には「反権力」どころか、「反犯罪組織」「反侵略勢力」としてすら機能しておらず、むしろその広報活動を手伝ってしまうのだから、日本にはジャーナリズムは存在しない、と言うほかない。

TBS系『報道特集』は、2022年の事件発生後は、気骨のあるスタッフが番組を支えているようで、統一協会と政治家の選挙支援問題や、献金の実態、二世信者問題など、積極的な追及報道を重ねている。

だが、その報道も「安倍晋三元首相が殺害され、その動機は、安倍が広告塔をやっていた統一協会への恨みだった」という日本中を驚愕させるウルトラ級の大事件が起きてしまった「がらがらぽん」のような状態になったからこそやれていることであって、早々に統一協会への解散命令が出て、問題解決に向かえば良いが、テレビである限り、どこまでその姿勢を貫けるのかはわからない……というのが、私の率直な感想だ。

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