障がい者の法定雇用率UPに企業側は「不安」。双方が“不幸”に陥るケースも

 

現在の2.3%から、2026年度中に2.7%に引き上げられる障がい者の法定雇用率。多様性が求められる社会にとって有効な施策であるとの声も多い中、雇用する側/される側が不幸に陥る可能性もあると、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さんは警鐘を鳴らします。

“手帳を持つ人を採用する”の認識でしかない?

3月は日本の年度末として普段とは違う風景が毎年繰り返されている。

年度内に終わらせなければいけない業務、決算に関連する細かな仕事等。

私もこの5年、文部科学省の委託研究の「成果報告書」に向けて、1年の活動の内容やその分析と評価、今後の展望を一気に整理し、それを文字化して整理する仕事に追われる。この時期は現実から逃避して、旅行にでも行きたくなってしまう。

そんな日々の中で、社会全体の不安要素であるのが障がい者雇用における年度末対応がある。

これは法定雇用率で出された人数に関して年度内に雇用することで、支払うべき障害者雇用調整金を少しでも減らそうという駆け込みの対応であり、タイミングが合えば雇用される障がい者には良い機会かもしれないが、場合によっては拙速な採用に雇用される側もする側も不幸になってしまうこともある。

3月はじめ、私の携帯電話にある企業の障がい者雇用担当者から連絡がきたのは、面談と実習に同行した利用者の「内定」の申し渡しだった。

2月の採用面談を終えて「1週間連絡がなかったら不採用です」と言われていたから、1週間を過ぎて、利用者は落ち込み、絶望的な気持ちになって自暴自棄な言動をひとしきりした後の内定通知だった。

嬉しいことに変わりはないが、当事者の気持ちにもなってみてほしい。

企業側のこの対応もやはり、障がい理解からは遠い印象がある。

当事者に期日を示したら、その通りにはまずは対応するのが基本であるが、この企業では面談の際に示した障がい者手帳への反応も心もとなく、手帳を持つ人を採用する、との認識でしかないのかもしれない。

私から手帳の「意味」を説明させていただいたが、それにもあまり関心を示さなかった。

障がい者雇用では、「障がい者」であることが条件であるから、それを証明する障がい者手帳の保持が必要だ。

面接で手帳を見せてください、と言われ対象者が手帳を示すと、その手帳の中身を見るが、その意味を介さない人は少なくない。

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