マイクロソフトが「新Bing」に続き、生成系AIを利用した新たなビジネスツール「Microsoft 365 Copilot」を発表。その進化した機能にインターネット登場時のような“ワクワク感”があると語るのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。生成系AIで明らかにリードしたマイクロソフトの動きに対して、グーグルがどう巻き返し、アップルはどう動くのかに注目。さらには、「これからAIの時代」と予言し投資もしていた孫正義会長のソフトバンクが、何の果実も得られていないことに関しても言及しています。
生成系AIブームで影薄いソフトバンクグループ──孫会長の「AI革命」とは何だったのか
ここ最近のマイクロソフトにおけるAIへの取り組みは目覚ましいものがある。OpenAIに出資し、彼らが進化させたAIを、誰もが使っている製品に落とし込んでいく。
OpenAIは「ChatGPT」でやや玄人向けのサービスを提供する一方で、マイクロソフトは新しいBing、さらには「Microsoft 365 Copilot」でAIを大衆向けに提供し、「AIの民主化」を進めている。この関係性が実に上手くいきつつある。
ChatGPTや新しいBing、さらにはMicrosoft 365 Copilotの登場は、世の中にインターネットが出てきたときの興奮、ワクワク感に近いものがある。コンピューターと人間の関係性が改めて見直される時代に突入したぐらいのインパクトを感じるのだ。
その点、「これからはWeb3の時代だ」と言われても、イマイチ、ピンとこない。Web3が語られる際には「これまでのGAFAがネットを仕切っていた中央集権的な仕組みから、分散社会にシフトしていく」ともっともらしいことが言われている。
しかし、いま、まさにインターネットに革命をもたらそうとしているのは、GAFAではないが、そこにちょっとだけ近い、中央集権なマイクロソフトなのだ。もちろん、OpenAIの存在が大きいのだが、OpenAIの技術を一気に普及させるマイクロソフトの存在は大きい。
マイクロフトが検索や文書作成の世界でゲームチェンジを起こそうとする中、そこに対抗できそうなのはグーグルだろう。今週の発表を見る限り、すぐにグーグルが対抗できるとは思えないが、彼らとしてはこれまで大もうけしてきたビジネスモデルが崩壊する可能性もあるだけに、待ったなしの状況だ。
メタはメタバースに注力しているが、マーク・ザッカーバーグCEOが「10年単位で見ている」ということもあり、すぐにメタバースが盛り上がるとは思えない。
一方で、アップルが、このAIブームにどう乗ってくるかが気になるところだ。お世辞でいっても、「Siri」はそんなに賢くないだけに、アップルが自社でAIを強化するよりも、OpenAIやマイクロソフトと組んで、ChatGPTベースの「新しいSiri」を作った方が手っ取り早いような気がしている。
昨今、生成系AIが盛り上がりを見せているが、この流れに全く乗れていないのが、散々、孫正義社長が「これからAI時代」と叫んでいたソフトバンクグループだ。
本来ならば、AI企業に積極的に投資していたはずのソフトバンクグループが評価されてもいいはずなのだが、シリコンバレーバンクの破綻の影響を受けて、株価も冴えない状況だ。
ソフトバンクグループがOpenAIに出資していた、あるいは関連や対抗する企業に出資してれば、いまごろソフトバンクグループの評価はうなぎ登りだったはずだ。
孫会長の「これからAIの時代だ」という宣言は何だったのか。これだけAIが盛り上がっている中、ソフトバンクグループが果実を得られていないのが何とも残念でならない。
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