ついに開かれた「第3次世界大戦」の扉。ポーランドの戦闘機供与が引き金に

2023.03.31
PARIS, FRANCE - MAY 29, 2017 : Vladimir Putin, the President of Russian Federation in press conference at the Palace of Versailles in the Battles gallery after a working visit with french President.
 

現実的に描く第3次世界大戦までのシナリオ

ロシアの核使用についてはこれまで多くの専門家が指摘しているので、ここでは割愛したい。今日までの情勢から、第3次世界大戦勃発までのシナリオを現実的に描けば、まずはロシアによるポーランドやスロバキアなどNATO加盟国への攻撃が考えられる。

戦闘機の供与というのは極めて軍事的リスクが高い判断である。今後戦闘機による攻撃によってロシア側の劣勢が顕著になれば、ロシアは戦闘機を供与したポーランドやスロバキアへの攻撃を選択肢として考えるようになろう。しかし、物理的な攻撃となるとリスクが大きいので、政府機関への自爆攻撃や大統領や首相の暗殺などいわゆるテロという手法を用いる可能性も十分にあり得る。

いずれにせよ、ロシアが戦闘機を供与したNATO諸国を攻撃することになれば、その瞬間に世界は第3次世界大戦に突入することになろう。NATO条約を読めばすぐ分かることだが、その第5条は「NATO加盟国の1つに対する攻撃はNATO全体の攻撃とみなす」と書かれており、要はNATO加盟国であるポーランドとスロバキアへの攻撃はNATO諸国全体への攻撃となり、米国も集団防衛に関与する法的責任が生じるのである。

第1次世界大戦の引き金となったのも、サラエボでオーストリア皇太子が暗殺された1914年のサラエボ事件であり、ロシアによるNATO加盟国へのテロでも第3次世界大変勃発の十分な可能性があろう。そうなれば、米国は対ロシアに軍事面の多くを割く必要性に迫られる。

欧州での戦火拡大を手ぐすね引いて待つ中国

一方、それを狙っているが中国だろう。台湾統一を掲げる習政権が台湾侵攻で最も注視しているのは米軍の対処能力である。米軍に人民解放軍の侵攻を止める能力がないと分かれば、侵攻へのハードルは一気に下がることになる。米軍がヨーロッパに対処せざるを得なくなれば、その分アジア太平洋での米軍の能力は低下することになるが、そうなれば海洋覇権と台湾統一に向けて、中国は軍事力をいっそう使用することになる。米軍も台湾防衛で一定の関与をすることになるので、そこで米中の軍事的衝突が生じることになる。しかし、ロシア軍と比較して中国軍のパワーは数段上であり、この状況では米軍はなす術がないのが現実だろう。

要は、第3次世界大戦はヨーロッパとアジアで同時進行で勃発する恐れがある。過去の大戦からも分かるように、大戦勃発の引き金は小さい出来事になる可能性がある。ポーランドとスロバキアの戦闘機供与がその出発点になる恐れもあることを我々は認識しておく必要がある。

image by: Frederic Legrand – COMEO/ Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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