GPT時代の賢いブレストの仕方
では、GPTはどうやって考えているのか?例えば「りんごって何?」と聞くと、GPTはウイキペディアなどのいろいろなところから集めてきた巨大なデータの中で、一番もっともらしいりんごに関する解説を持ってくるわけですね。
また、「聖書の中のりんごの扱い」について聞くと、限定した空間の中でもっともらしいことを持ってくるわけです。こういうふうに、可能性空間を限定して聞くと、より自分が知らないことを知識として答えてくれるのがGPTのいいところです。
彼らには、「NFTとはこういう機能に分かれています」みたいに、NFTの知識があるわけですね。先ほどお話ししたジル・ドゥルーズに対しても同じように、「ジル・ドゥルーズはこういうことを話した人です」という空間があるわけですよ。
(それを踏まえて、)GPTに質問する時に、「NFTがジル・ドゥルーズによって広がる可能性を聞きます」とすると、そこがブリッジしてくれるので、「NFTの機能のこの部分とジル・ドゥルーズが言っているこの部分を無理やりつなぐことが可能性として大きそうだ」「一方で、NFTのこの側面とジル・ドゥルーズのこの解説は、こういうふうにつながるな」と、確率が高いつながりを探してくれる。
人間は、「あれとあれって似ているな」とか、「これとこれって、共通点があるな」と直観的に思う生き物です。
だから、遠いつながりの中の共通点を探してくれて、どういう論理ステップでつながっていくのかを説明してくれると、「あ、そうか。その手があったか」と、過去の歴史データベース・偉人データベースの型に即して新しいものを再解釈することができる。
それがGPT時代の賢いブレストの仕方です。
「尾原さん、ジル・ドゥルーズみたいな名前、思いつきませんよ」という話もあるかもしれませんが、「その分野に近い人の名前を挙げてください」みたいなことが、やろうと思えばできるわけですね。
「NFTの可能性を議論する時に読むとヒントになる社会学の学者を10人挙げて、その理由を記述してください」とか、この「社会学」のところを哲学や物理学など、いろいろな分野に変えるとこうやって挙げてくれますし、「ピエール・ブルデューの観点から考えて、NFTの可能性を広げるとすればどういうふうに議論ができるでしょうか?論点を挙げていってください」みたいなことをすると、先ほどのようになります。
ここで大事なのは、「嘘をついている可能性もある」ということです。
でも、嘘をついていてもかまわないんですよ。なぜならば、僕らは「遠くにあるもので、なんとなくつながりがありそうなところ」を聞いて、そのつながりを解説してもらうことで、新しい観点を広げることができるからです。
繰り返しになりますが、イノベーションは、ふだんつながらない遠くのものをつなぐから、新しいものが生まれるわけです。そういうふうに、遠くを直観的につないでみたものを解説してもらうことが、GPT時代にクリエイティブでいられる秘訣です。
さらにおもしろいのは、これで議論をしたあとに、例えば「これに反論してみてください」と言うと、反論としての論破で、「なるほど、この論理の弱さはここにあるんだな」と“一人ブレスト”できることです。
なので、ぜひぜひGPTをクリエイティブな壁打ち相手として、遠くとつながる時代の未来を楽しみましょう。じゃあね。
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