故ジャニー喜多川氏の性加害疑惑について、少しずつ日本のテレビ局が取り上げるようになりました。しかし、まだまだ「報道」の責任を果たせていないのが事実ではないでしょうか。今回、メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』の著者、現役医師で作家の和田秀樹さんは自身のメルマガで、日本という国の性悪な面、そしてテレビ局の偽善に憤りを隠さず語っています。
日本のテレビ局の偽善
ジャニー喜多川のセクハラをBBCが取り上げてからかなりの騒ぎになっている。
これに対して姉の娘で社長の藤島ジュリー喜多川氏が記者会見をして、基本的に訴えを認めたので、テレビ局の断罪が始まった。
拉致問題のときもそうだが、日本という国は、隠しているときは悪く言わないのに、正直に認めるとボコボコに叩く。
ワシントンの桜の木の話が昔は道徳教育で聞かされたが、その話とはまったく逆のことをやっている。
これではウソつきは絶対に白状しなくなる。道徳教育など無駄になるだけだ。
確かにセクハラというのはトラウマが一生残ることがあるから、もっと罪が重くていい。
アメリカでのPTSDの大規模調査によると、自然災害ではPTSDになる人が5%程度なのに、レイプでは46%の人がPTSDになっている。ところが、男性が男性にレイプされた場合は、なんと65%の人がPTSDになっている。
日本の医学部の教授たちは動物実験ばかりやって人間の心がないから、日本中の82の大学で多数決で決められる精神科の主任教授の中に一人として、私のようなカウンセリングを専門とする精神科医はいない。PTSDになったら最後、よほど優秀な臨床心理士に診てもらわない限り、精神科医で治せる人はほとんどいない。
こころのケアに全力をあげるようなことをジュリー社長はいうが、ちゃんと治療ができる人を見つけられるのだろうか?
それ以上に不愉快なのは、日本のテレビ局の偽善だ。
ジャニーという人のセクハラは前から有名だったし、35年も前に北公次という元大スターが『光GENJI』へという告白書を書いているのに、テレビはまったく無視した。
今でも表紙にジャニーズのタレントを使う雑誌は、朝日新聞の子会社でもこの問題をとりあげない。本当にジュリー氏は圧力をかけていないとは思えない。
いずれにせよ、子どもたちやタレントの人権より、ジャニーズのタレントを使うことを優先させて、だんまりを決め込んでいたテレビ局が今頃になって正義の味方面をしても不愉快になるだけだ。
※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2023年5月20日号の一部抜粋です。
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