アップルの「iPod」とソニーの「ネットワークウォークマン」
例えば、2000年代半ばのアップルとソニーです。アップルがiPodで「画期的な簡易化」に向かったのとは逆に、当時のソニーが対抗として出した初代「ネットワークウォークマン」は高音質を謳ったものの、非常に複雑な製品でした。
Atrac3というソニー独自のファイル形式、さらに「チェックイン」「チェックアウト」という煩雑な著作権管理機能を持ち、ユーザーにそっぽをむかれてしまいます。
私が取材していたデジタルカメラや光ディスクもそうです。東芝が最初に開発したDVDなんて、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW……など規格が乱立しすぎて意味不明になってしまいます。各社が「自社規格」にこだわったためです(これ作ってたの、ほぼ全てが日本メーカーです)。
デジタルカメラやプリンタはどんどん高画質化し、その競争が激化すると、ユーザーの肉眼ではわからないものが増えてしまいました。仕方ないので、雑誌の誌面ではルーペで拡大して「ほら拡大すると画質が旧製品よりも上がっています」と記事を作ってました。
内心、「これ読者のメリットあるのかな」と思うのですが、そういう自分自身も雑誌が崖っぷちにいることを感じていました。自分が面白いと思うものを紹介するのは楽しいですが、つまらんと思うものを紹介するのは苦しいのです。
デジタルカメラもパソコンもプリンターも、目では確認できない「差」を追求し始めてしまったように思えました。デジタルで「簡単」になる海外製品に対して、「複雑」になる国内製品。勝ち目がないと思いました。
日本国内で競争しまくった結果、ユーザーにとってはなんだかわからない機能が並ぶ製品が溢れてしまい、「似たような製品が多すぎて選ぶのが大変」になってしまいました。この傾向は今も続いています。
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