高品質、高付加価値がアダに。「日本製」が通用しなくなった皮肉

 

会社員の雇用を守るためには仕方ない

結局のところ、「製造業の社員の雇用を守るためには、致し方なかった」という桂さんの説明が、割としっくりくる気がします。社員が多いから製品が多く、本来差がないものに無理やり差をつけてる。複雑化するのは、仕方ないのです。

同じことは、今も日本のほぼ全ての産業に言えるんじゃないかな……。グミの種類が多すぎて驚愕した話は書きましたが、発泡酒もデザートもお菓子もおせんべいも種類がありすぎるのは、この辺に原因があると思う。

例えば、教育現場に取材すると「教科書会社の人の雇用をなくせないから、教科書を使い続けるしかない」と言われることがあります。だから、先生はカリキュラムを終わらせることに必死にならざるを得ないのだそうです。個別カリキュラムではときに教科書から自由になる必要もあるのですが、それが難しい。そこへデジタル化やインクルーシブなど、世の中の流れが加わるから忙しくなるのかな……。

書籍も出版点数が増えすぎて、売るのが本当に大変な時代になったようです。

AIの発展で人がいよいよいらなくなると言われますが、「会社員での安定雇用が欲しい」が国民のコンセンサスである以上、製品点数は増えまくって複雑化する──この宿命から逃れるのは、難しい気がします。

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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