コロナ禍で多くの企業や個人商店が閉店せざるを得なくなる状況を目の当たりにしてきましたが、「後継者がいない」というのも個人商店が廃業してしまう大きな理由のひとつです。一方、後継者問題を解決した良い事例もあります。今回は、メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』で著者の佐藤きよあきさんが、 カステラの老舗だった和菓子屋さんの味をパン屋さんが受け継ぐという珍しいエピソードを紹介しています。
老舗のカステラが消滅!味を引き継ぐのはパン屋さん?
社会情勢が厳しい中、企業の倒産、個人商店の廃業が増えています。
例え、大企業や老舗と呼ばれるお店であっても、苦渋の決断を迫られ、長い歴史に幕を降ろさざるを得なくなっています。
救う手立ては少なく、お客さまと涙の別れとなってしまいます。
カステラの老舗として知られる、とある和菓子屋さんも、そんなお店のひとつ。
50年以上に渡って、味を守り続けてきましたが、店主・職人の高齢化、後継者の不在などにより、廃業することとなりました。
地元の人に愛されたカステラも作り手がいなくなり、もう食べられなくなるのです。
時の流れで仕方なし、とは言え、寂しく残念なことです。
またひとつ、食文化が消えてしまうのです。
そんな時、このことを知ったひとりの男性が、この大きな損失を食い止めるため、立ち上がりました。
カステラの大ファンだった、地元のパン屋さんが、カステラの味を何とか受け継ぐことはできないかと、和菓子屋さんの店主に直談判したのです。
私に作らせてください。味を継承させてください。
和菓子屋さんの店主としても、閉店はするものの、その味が残るのなら、それは願ってもないこと。
諦めるしか選択はなかったことに、ひと筋の光が刺したのです。
職人として、これほど嬉しいことはありません。
苦労を重ねて作り上げたものが、これから先も残り続け、人びとを喜ばせることができるのです。
ここから、パン屋さんのカステラ修行が始まりました。
パンとカステラは、小麦粉を捏ねて焼くという点では、作り方が似ているようにも思えますが、まったくの別物。
丁寧に教えられても、同じものにはなりません。
何度も何度も作りますが、「これは売りものにならない。お客さんに失礼や!」と言われてしまいます。
25年の経験があるパン職人であっても、なかなか上手くいきません。
しかし、長い時間は掛かったものの、やがて納得のいく味を作り出すことができ、パン屋さんでのカステラ販売が始まったのです。
パン屋さんのお客さまは、もの珍しさで買ってくれ、和菓子屋さんのお客さまも、馴染みの味が戻ってきたことに喜びました。
パン屋さんが和菓子屋さんの味を受け継ぐという、非常に珍しいケースですが、見事成功しました。
惜しまれつつ閉店してしまうお店はたくさんあります。
地域の財産とも言うべき味を残すために、異業種・異業態のお店が受け継ぐ。
こうした取り組みをもっともっと広めれば、人びとの愛したものを守り続けることができるのではないでしょうか。
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