人体にさまざまな不具合をもたらすことで知られる活性酸素。そんな厄介者を効果的に撃退できる方法、ないものでしょうか。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では糖尿病専門医の江部康二先生が、活性酸素の残存を防ぐため積極的に食べるべき、抗酸化成分を豊富に含む食材を列挙。さらに酸化ストレスのリスクを下げる「究極の食事法」を紹介しています。
「酸化ストレス」は老化や万病の元
酸化ストレスとは
人体は酸化反応と抗酸化反応のバランスが取れていると正常に機能します。
酸化反応が抗酸化反応を上まわった状態を酸化ストレスといいます。
ヒトは、呼吸によって1日に500L以上の酸素を体内に取り入れていると考えられています。
呼吸によって毎分約0.3Lの酸素が肺胞から血液中に送られます。このうち約2%が活性酸素に変わるといわれています。
生体内の抗酸化システム(SODなど)で処理しきれない活性酸素が残存した場合、酸化ストレスとなり、人体の構造や機能を担っている脂質、たんぱく質、酵素、DNAなどに損傷を与えてしまい、老化の元凶とされています。
さらに老化以外にも、糖尿病合併症、動脈硬化、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病などのさまざまな病気の元凶とも考えられています。
また、これらの病気を発症すると、さらに酸化ストレスのリスクが上昇するという悪循環パターンとなり、症状が進行する可能性があります。
活性酸素を増やす要因
活性酸素を増やす外因としては、酸素、紫外線、大気汚染、化学物質、農薬などさまざまな環境因子が明らかになっています。
体内でSODを作る能力は40歳前後から低下していきます。
従って食物から抗酸化成分をしっかり取ることが必要です。
野菜、海藻、キノコ、大豆、ナッツなど糖質制限食の食材にも抗酸化成分が豊富に含まれますので、積極的に食べましょう。
一方で、内因としては、血中のインスリン値が高い状態が続く「高インスリン血症」が、活性酸素を発生させて酸化ストレスのリスクになるといわれています。
高インスリン血症を生じさせるリスクが最も高いのは糖質です。
たんぱく質もある程度インスリンを分泌させますが、脂質は分泌させません。
つまり、「糖質+たんぱく質」はインスリン分泌を最も増やします。
食後一定時間が経過した後も血糖値の高い状態が続く「食後高血糖」や、血糖値が高い時と低い時の差「平均血糖変動幅増大」も活性酸素を発生させ、酸化ストレスのリスクになると考えられています。
従来の糖尿病食(カロリー制限食=高糖質食)など、糖質を1日の総摂取カロリーの50~60%摂取する食事では、「高インスリン血症」「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」を必ず生じ、酸化ストレスのリスクが増大する可能性が高いのです。
酸化ストレスのリスクを少なくする「糖質制限食」
「糖質制限食」は食事で摂取する糖質をできるだけ減らして、血糖を良好にコントロールしようというものです。
これなら必要最低限のインスリン分泌ですみますし、食後高血糖や平均血糖変動幅増大も生じませんので、酸化ストレスのリスクは極めて少なくて済みます。
このように、酸化ストレスリスクを効率よく予防するには、糖質制限食以外の選択肢はないと考えられます。
糖質制限食は老化を緩和させ、糖尿病合併症や生活習慣病を予防できる唯一の食事療法と言えます。
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