誰もがスマホを持ち、何らかのデジタルツールを利用する時代ですが、自分がしたいこと、望むことを過不足なく実現できるツールを探し出すのは難しいもの。本当に欲しい機能が何か明確になっていなければなおさらです。今回のメルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』では、Evernote活用術等の著書を多く持つ文筆家の倉下忠憲さんが、「アイデアノート」としてEvernoteを使うことにした理由を説明。使いながら感じた違和感や不便さが欲しい機能をキャッチするヒントになり、そのためには、使い慣れたツールの方が効率がいいと伝えています。
慣れたツールで実験する
前回、Evernoteの新しい使い方について書きました。これまでの「何でも山盛りストロングスタイル」ではなく、ごく単純に「アイデアノート」として使っていくやり方です。
うちあわせCastでその話をしたら、Tak.さんに「そのやり方だと、Evernoteの機能をほとんど使っていませんよね」と指摘されたのですが、まさしくその通りです。デジタルノートとしてEvernoteが備えている機能のほとんどを使っていません。だいたい以下の3つだけで成立しています。
- ノートブック
- ノートリンク
- クラウド連携
これでは、わざわざEvernoteを使う意味みたいなものが見出しにくいでしょう。もっとシンプルに似たことができるツールはありますし、極端なことを言えば自分でそうしたツールを作ることもできます。そうした方がよりフィットした使い方ができるでしょう。
にもかかわらず、です。やっぱりEvernoteがいいよな、というポイントがあります。それは「慣れている」ということです。
実験の土台
私が今やっているのは、ある種の「実験」と言えます。未来永劫このやり方でやるのだ、というのではなく、「こんなやり方をしたらどういう感触になるだろうか」を確かめている感じです。
すでに今の段階でも「おそらく、最後の最後はEvernoteではないツールでやることになるのだろうな」という感触があります。自作のTextboxに「アイデアノート」を扱う機能を実装するのが一番好ましい結果になるでしょう。
だったらはじめからTextboxでやった方が効率的じゃん、という(私の心の)声が聞こえてくるわけですが、それは誤った推論なのだとも思います。
第一に、自分が何をやりたいのかが漠然としている状態では、ツールが所与として与えてくる制約が一つの叩き台として機能するからです。
自分でプログラミングする場合、何がやりたいのかがわからなければコードの書きようがありません。一方で、すでに存在しているツールを使っていると、「いや、こうじゃない。別のやり方がしたい」という感覚──違和感──が立ち上がってきます。そうした感覚さえ明確になれば、あとはコーディングにまっしぐらです。
つまり、既存のツールを使うことは、違和感駆動にピッタリなのです。
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