小林よしのり氏が解説。ビル・ゲイツ「人口削減計画」という陰謀論はナゼ信じられたのか?

 

「主役」同様変化する陰謀全体を操っている「ラスボス」

同様に、陰謀の全体を操っているとされる「ラスボス」も、時代によって変化している。以前は「フリーメイソン」だったのが、いつの間にか「イルミナティ」になり、そして今は「ディープステート」だ。他にもいくつもあったはずだが、いつの間にかみんな消えている。

フリーメイソンは16~17世紀頃に設立したとされ、現在も世界中に存在している友愛結社である。

秘密主義で活動内容を公開していないことから陰謀論者によって陰謀の「主役」にされ続けてきたが、近年ではもともと政治とも宗教とも一線を画し、ボランティア等の活動をしている親睦団体であって、陰謀などとは何も関係がないということも知られるようになってきた。

そしてイルミナティは、1776年にドイツで設立された政治的な秘密結社だが、活動したのは10年足らずで1785年に解散、現在は存在していない。しかし陰謀論者はこれを「実は人知れず存続し続け、現在も存在する!」ということにして、陰謀の「ラスボス」に使っていたのだ。

要するに、実在する団体を陰謀論の「主役」に仕立て上げていたが、それに説得力がなくなってきたために、過去にあった団体を今も実在することにして乗り換えたということだろう。

そして、イルミナティもまた説得力がなくなってきたところで、次に出て来たのがディープステートだ。これはもう、歴史上に1分1秒も実在したことがない、全く架空の存在である。そのうちディープステートに説得力がなくなれば(というか、最初っから説得力なんかないが)、また別の名称の「ショッカー」みたいなものが登場するのだろう。

どんどん「ラスボス」が実在感のない、漠然としたものになっていくのが露骨で面白いところだ。

日本における代表的なディープステート陰謀論者が、前回も批判した元駐ウクライナ大使・馬渕睦夫だが、井上正康(もう敬称略)は6月9日、馬渕を自分のチャンネルに招いてニコ生ライブをやる予定で、これを「遂に実現!」と煽っているらしい。

馬渕に言わせると、ウクライナ戦争もディープステートの陰謀であり、ゼレンスキーはディープステートに踊らされているだけで、プーチンこそがディープステートと戦う正義の人だそうだ。そして、ウクライナが訴えているロシア軍による虐殺などは、全て「フェイク」ということになっている。

そんな人間を呼んで対談するような井上を、その2日後の「オドレら正気か?LIVE」に招いて話したところで、議論が成立するはずがない。「お前は正気か?」と言ってるだけで終わってしまう。

見ている人にもただ不毛で不快な時間を過ごさせるしかなくなるのは間違いなく、キャンセルは妥当な措置と言うしかないだろう。

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