小林よしのり氏が解説。ビル・ゲイツ「人口削減計画」という陰謀論はナゼ信じられたのか?

 

元駐ウクライナ大使の洒落にならないネオナチ的主張

それよりもっと懸念されることは、馬渕睦夫が著書で、20世紀以降の世界の重大な歴史は全てディープステートが操っていると主張していて、特にヒトラーは「意図的に巨悪に貶められて」おり、「問題は、ドイツを事実上支配していたユダヤ人がドイツ人の権利を侵害して、ドイツ文化を破壊し、自分たちの利益を優先しドイツ人との共存を図らなかったことなのです」と断言し、「むしろ、ナチスドイツは被害者であった側面が強いのです」と主張していることだ。

そして馬渕はユダヤ人の強制収容も「特別の国際法違反ではありません」と言い、「ヒトラーがジェノサイドを命令したとの証拠はこれまで発見されていません」と強弁し、アウシュビッツに関しては、「焼却炉が、終戦後、ユダヤ人を殺したガス室だとみなされるようになりました」とまで主張している!

さすがに「ホロコーストはなかった」とはっきり言ってしまうと一発アウトになることだけはわかっているらしく、「いわゆるホロコースト論争に立ち入るつもりはありません」だの「歴史的にまだ完全には証明されていないのではないか」と言いたいだけだのと見苦しい言い訳を付け加えているが、そんなことをいくら言っても完全に無意味だ。

そんな幼稚な小手先の言い繕いなど通用しない。 ここまで言っていれば、誰がどう見たって「ネオナチ」以外の何物でもない。

もしも井上が馬渕とニコ生で対談した時にヒトラーの話題が出て、馬渕の言うことに井上が同意してしまったら、大変なことになってしまう。

わしの『コロナ論』シリーズも、たけし社長の意見広告運動も、「ネオナチ」が協力していたということになって、すっかり信用を失ってしまうおそれがある。

こんなことでわしが心血を注いで作り上げた作品の価値が無になるかもしれないと思ったら、本当に腹が立って仕方がない。

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信用して共闘した知識人でも、全面的に信用してはダメだ。あくまでも自分の「常識」を根拠にしなければならない。

それが、今回得た最大の教訓である。

 (『小林よしのりライジング』2023年6月6日号より一部抜粋・文中敬称略)

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image by: Edward Crawford / Shutterstock.com

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