すべては米国のヤラセ。日本と韓国の「関係改善」が急ピッチで進んだ理由

jm20230619
 

文在寅前大統領時代にこじれにこじれもはや修復不可能かとも思われるも、昨年5月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が新大統領に就任するや、劇的とも言える改善を見た日韓関係。しかし両国の急接近は思わぬリスクも呼び込んでしまったようです。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、日韓関係改善の裏側を深堀り。さらに尹政権に韓国発祥の旧統一教会問題における責任を問えない自民党の姿勢を批判的に記すとともに、「日韓の復縁」の副作用を解説しています。

統一教会問題の責任も追求できず。日韓関係改善によるリスクと副作用

史上最悪とまで言われた日韓関係に改善の兆しが。

2022年5月に発足した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、就任直後から積極的に西側諸国との関係を強化。2022年6月には、NATO(北大西洋条約機構)のサミットに韓国大統領として史上初めて参加。

同年9月には、アメリカのニューヨークで、バイデン大統領が主催する「グローバルファンド増資会合」の会議に出席、バイデン大統領と挨拶を交わす。

年が明け、2023年4月には、バイデン政権下で2人目となるアメリカへの国賓としての訪問を行う。議会での演説も行った。アメリカでは、「ワシントン宣言」を発表。

ほぼそれにあわせるように、ユン大統領は3月に訪日。5月7日には、岸田文雄首相が訪韓。シャトル外交も復活させ、互いに関係改善をアピールした。

日韓関係の改善は喜ばしいことだが、そこに日本の“独自外交”ということがあったかというと疑問符がつく。結果的には、「アメリカの、アメリカによる、アメリカのための」日韓関係の改善にほかならない。

バイデン大統領は、アメリカの「最大のライバル」と位置付ける中国と向き合うため、いずれも米国の同盟国でありながら冷却状態にあった日韓関係の修復を急務としていた。

そもそも外交を得意としてきたバイデン氏は、副大統領の時代から、困難な状況にある諸外国間の関係改善のためには首脳同士が直接向き合うことが不可欠であり、そのためには必要であればホワイトハウスも後押しするとの信念を個人的に抱いてきたとされる(*1)。

具体例としては、オバマ政権下、副大統領として、自らが当時、険悪な関係にあったイスラエルのネタニヤフ、トルコのエルドアン両国首脳に直接働きかけ、その後両国関係が好転した事例があった。

目次

  • 目的のためには手段を選ばず。バイデンに乗せられた日韓
  • 韓国に統一教会問題の責任を追求できない岸田の腰砕け
  • 日韓関係改善とともに高まる東アジアの軍事的緊張

目的のためには手段を選ばず。バイデンに乗せられた日韓

ただ、バイデン氏の場合、「目的実現のためには手段を選ばない」思惑が透けて見える。バイデン氏がめざすことは、アメリカ、日本、韓国、台湾の4カ国による、何らかの集団安全保障体制を構築することだろう。

そのために必要であったのが、日米同盟の強化であったのだ。そのことは岸田政権の安保3文書が閣議決定され、日本の軍事力強化の方針を打ち出したことで軌道に乗る。

しかしながら、ロシアのウクライナ侵攻を受けて軍事的な結びつきが再結束したNATO(北大西洋条約機構)とは違い、東アジアには集団安保組織が存在しない。

だからこそ、バイデン政権と台湾有事と北朝鮮の核・ミサイル開発加速を強烈に“煽り”、東アジアにおける集団安全保障体制の構築を狙う。これは、いわばNATOの東アジア版といってもよい。

事実、岸田文雄首相は、5月7日の日韓首脳会談直後の会見で、

「北朝鮮の挑発行為が続き、力による一方的な現状変更の試みもみられる中、日米同盟、韓米同盟、日韓そして日韓米の安全保障協力により抑止力と対処力を強化することの重要性についてあらためて一致した」

と述べている。

その両輪としての米韓首脳会談があったのだ。ユン大統領とバイデン大統領は、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験と核開発に対抗し、アメリカの「核の傘」を中心とする拡大抑止力強化のために、

  1. 核搭載の原子力潜水艦の韓国への派遣
  2. 敵への反撃も含めた核抑止のための局長級「米韓核協議グループ(NCG)」の新設
  3. 北朝鮮が核を使った場合はアメリカが確実に核報復を柱とする

「ワシントン宣言」を発表した。

このなかでも、新設される米韓核協議グループは、NATO加盟5カ国(ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコ)が米軍の核兵器を保管し、有事に同5カ国の部隊が核攻撃任務に使用する、いわゆる「核共有」制度の“アジア版”ともいわれる(*2)。

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