楽天モバイルが求めるプラチナバンドの再割り当て問題は、NTTドコモの指摘により700MHz帯に利用可能な帯域が見つかったことで、解決の道筋が見えてきました。元々楽天の要望ありきとは言え、総務省が発表した割り当て事業者を決める審査基準の案は、露骨に「楽天有利」となっているようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、審査項目と点数配分に「楽天モバイルに勝たせる」意図が丸見えと指摘。これでは、時間と労力の無駄で、もっと効率的な方法があると提言しています。
総務省が700MHz帯の比較審査基準案を発表──楽天モバイルが明らかに有利な点数配分に意味があるのか
総務省は6月21日、新たに割り当てられることになる700MHz帯についての開設指針案を公開した。楽天モバイルが欲しがっていたプラチナバンドにおいて、当初は3キャリアから返上してもらい、楽天モバイルに割り当てるという奇策を具体化しようとしていた。
そんななか、NTTドコモが「ラジオマイクや高速道路交通システム用途(ITS)の間で3MHz幅×2が使えるのではないか」という提言を出したことで、一気に話が進んできた。総務省では開設指針案を出すとともにパブリックコメントも募集。さらに割り当てる上での絶対審査基準案や比較審査基準も公開している。
実際にこれらを見ると「明らかに楽天モバイルが有利」という内容になっており、総務省の苦労ぶりが窺える。最もわかりやすいのが比較審査基準において「いわゆるプラチナバンドの割り当てを受けていないこと(24点)」という項目だ。全104点のうち、これだけで24点も与えられるというのに驚きだ。もはや、こんな茶番、比較審査なんて最初からやる必要はないのではないだろうかと思えるほどだ。
ただ、ちょっと思ったのが、例えば、UQコミュニケーションズやWireless City Planningであれば「いわゆるプラチナバンドの割り当てを受けていない事業者」だったりもする。全国に基地局設備を持っている事を考えれば、楽天モバイルの対抗馬になる可能性も考えられる。
しかし、別の比較審査基準を見ると「高周波数帯(sub6・ミリ波)と組み合わせた整備をより行うこと(24点)」とある。この審査項目だとsub6やミリ波を持たないUQコミュニケーションズやWireless City Planningは点を稼げないことになってしまうのだ。総務省、ちゃんと考えているようだ。
ちなみに絶対審査基準には「同一グループ企業から複数の申請がないこと」という項目があったりする。つまり、KDDIとUQコミュニケーションが別々に申請するというのも封じられているのだ。
一部報道では、楽天モバイルとは別に獲得を狙っている事業者がいわれているが、高周波数帯(sub6・ミリ波)と組み合わせた整備をより行うこと(24点)という項目により、何も持っていない新規参入者は獲得が相当、難しいということになる。
すでに「プラチナバンドを受けていない」「高周波数帯(sub6・ミリ波)と組み合わせた整備をより行う」という2つの条件だけで48点を獲得できる「楽天モバイルに勝たせるための比較審査」になっており、審査に応募する事業者にとっても、それを審査する総務省にとっても、時間と労力の無駄で終わる割り当てと言えそうだ。
こんなことなら、オークション制にしてしまい、とっとと楽天モバイルに入札させて、即割り当てたほうが効率的ではないだろうか。
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