ソフトバンクが明らかにした「10万件の純減」という数字は、これまでの「どれだけ契約数を積み上げられるか」という通信キャリアの競争軸を揺らがすものになっているのかもしれません。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、通信キャリアの数を追う経営からの脱却のきざしについて語っています。
ソフトバンク史上初「10万件純減」の衝撃
今週、最も驚いたのはソフトバンクの決算会見だ。
この3か月で、10万件も純減していると明らかにされた。まさに宮川潤一社長が「我が社、始まって以来のこと」と言っていたが、参入以来、新規契約者の獲得にこだわっていたソフトバンクとしては考えられない出来事だ。
ただ、昨年から宮川社長は純増数にこだわらない姿勢を見せていた。純減を受け入れたことで、ソフトバンク社内の体質も変わるのではないか。
宮川社長は、1年近く「値上げしたい」と語っているが、いまだにメインブランドでの値上げには踏み切っていない。値上げして、ユーザーが逃げていくのを営業的に恐れていたのかも知れないが、一度、純減を経験してしまえば、値上げも断行できるのではないか。
KDDIは新規プランだけでなく、既存の料金プランも一斉値上げして、モバイル収入を爆上げさせた。なんとか純減は回避できたが、新規契約者数は横ばいに近い。
他社から見れば、KDDIの「既存プラン値上げ」は相当、うらやましいはずで、ソフトバンクも追随してくるのではないか。
ビジネスインサイダーの原稿でも書いたが、KDDIとソフトバンクが同じタイミングで、数から質にこだわる経営戦略に舵を切ったのは面白い。いたずらに新規契約者の数を追わず、MNPで獲得できそうな販促も強化しないというスタンスに移行しつつある。
一方で、NTTドコモと楽天モバイルはいまだに数にこだわる営業施策を展開している。NTTドコモはその結果、業績が極めて悪化している状況を招いてしまっている。
ネットワーク品質がもうちょっとまともであれば、こんなにユーザーが流出しないのだろうが、現状は顧客の流出を、販促で新規顧客を獲得して補うという悪循環が続いている。
NTTからの「シェア35%死守」が至上命題で、なんとかMNPでプラスに持って行こうとしている様子がうかがえる。
楽天モバイルは1000万契約を突破し、通期EBITDAも黒字化するなど、なんとか公約を実現した。しかし、足元ではユーザーのネットワーク品質に対する不満が爆発している。
今回の決算会見で、今年は2000億円の設備投資をすると約束したが、2025年度の売上は4828億円しかない。
今後もますますトラフィックが伸びていく中、2000億円では足りないのは明らかだ。
携帯電話の民主化を掲げる楽天モバイルが、すぐに値上げするのは困難であることを考えると、赤字体質の脱却には遠く先になるのではないだろうか。
今週、Opensignalが2025年のレポートを発表したが、auとソフトバンクが好成績を収めた。ネットワーク品質が良ければユーザーが定着する一方、品質が低ければ、ユーザーが逃げ、結果として設備投資と販促費がかさむ。
日本の通信業界は2極化が進んでいるようだ。
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