飼い犬プリゴジンに手を噛まれた裸の王様プーチン。それでも「核戦争」は起きぬと断言できる訳

2023.06.28
Russia,,Rostov-on-don,,24.06.2023.,Tank,On,The,Streets,Of,The,City
 

蜂起した本人は政権を打倒する意図はなかったと主張しているものの、結果的にプーチン大統領に大きなダメージを与えることとなったワグネル代表プリゴジン氏の軍事反乱。なぜ彼は突如反旗を翻したのでしょうか。「プリゴジンの乱」を2週間以上も前に予言していた、『宮司のブログ』の著者で、1250年以上の歴史を持つ愛知県清須市の清洲山王宮「日吉神社」の神職三輪家56代である宮司・三輪隆裕さんは今回、プリゴジン氏が6月初旬に見せていた「蜂起の伏線」を紹介するとともに、反乱の先に見据えていたものについて解説。さらにロシアという国家の行く末を予測しています。

三輪隆裕(みわ・たかひろ):
清洲山王宮日吉神社 宮司。至学館大学客員研究員。1948年、愛知県にて出生。名古屋大学文学部卒業、諏訪神氏に連なる神職三輪家56代。保守系の国会議員らで組織される日本会議と、全国に8万の拠点を持つ神社本庁による「全体主義」「戦前回帰」に異を唱える言論活動をおこなっている。また、IARF(国際自由宗教連盟)を通じて世界に異宗教間の相互理解と共存を呼びかけている。

狙いはロシア政局の主役。プリゴジンが6月初旬に見せていた蜂起の伏線

6月7日付けの宮司のブログ「ウクライナ戦争の終結」の中で、「おそらく、ロシアで政変が起こり、この戦争は終結する。」と予測した。この記事は、ロシアがウクライナに勝利すると前提して停戦を求める様々な内外の声に反論するために書いたものであるが、最後の予測のところが、見事に的中してしまった。いわゆるプリゴジンの乱である。

● 宮司のブログ:ウクライナ戦争の終結

プリゴジン氏が率いるワグネルの精鋭部隊は、ロシア南部から蜂起して、国民の声援を受けつつ、あっという間に1,000キロを進軍し、モスクワ近郊に至ったところで、突然行軍を終息した。ベラルーシのルカシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領との話し合いに基づき、プリゴジン氏はベラルーシに移動し、ワグネルの軍隊は許され、希望者は契約によりロシア国軍に吸収される、もしくはベラルーシに移動することも許されるということのようであるが、それ以来、ブリゴジン氏の消息は絶たれた。

まだまだ予断は許されないが、一様に報道は、プーチン政権の揺らぎを報じている。

ここに至る伏線は、度々報じられていた。プリゴジン氏は、大激戦となったバフムト攻略戦で、最前線に立って奮戦し、ウクライナ軍を追い出し、ロシアの英雄となった。バフムトを占領するとすぐ、ロシア正規軍にその地を譲り、弾薬の不足に対する不満をショイグ国防相やウクライナ軍事作戦の総指揮官ゲラシモフ参謀総長にぶつけ、さらには、ウクライナ軍の勇猛さを称賛した。また、ウクライナ軍にロシア正規軍の位置情報を提供すると申し出たが、ウクライナ軍に拒否されたとの報道もあった。プリゴジン氏はロシア正規軍の官僚に対する不満の結果として今回の乱を起こしたと推定される。ルカシェンコ大統領を介してプーチン大統領と何らかの妥協点を見出したので、鉾を納めたのであろう。

プーチン大統領は、6月13日の記者会見で、ウクライナ側の反撃は成功していないとして、ロシア軍の反撃の成果を強調した。一方西側のメディアは、ウクライナ軍は損失を出しつつも確実にロシア軍を占領地から追い出しているとした。この様子から推察されることは、プーチン大統領の元には、相当間違った戦況報告がなされていて、彼は「裸の王様」状態に近いということだ。

プーチン氏が本来の権力を維持し、正確な情報を得ているならば、プリゴジンの乱は起きなかったし、起きたとしても、すぐ制圧されたであろう。それができないということは、すでに、ロシア軍はまともに統率されておらず、プーチン大統領の元へも正確な情報は届いていないということだ。

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