尹錫悦に「反国家勢力」扱いされて激怒した文在寅の“嘘”で塗り固めた主張

STOCKHOLM, SWEDEN - JUNE 15, 2019: The President of South Korea visiting Stockholm.STOCKHOLM, SWEDEN - JUNE 15, 2019: The President of South Korea visiting Stockholm.
 

先月行われた自由総連盟の創立記念行事にて、文在寅政権を「反国家勢力」と称し痛烈批判した韓国・尹錫悦大統領。この言い過ぎ感もある現役大統領の発言に、国内外から様々な反応があります。無料メルマガ『キムチパワー』を発行する韓国在住歴30年を超える日本人著者は、「尹大統領の発言はストレートで刺激的な語彙」としながらも、反国家勢力扱いに激怒した文在寅が“嘘で塗り固めた主張”をしたと指摘。さらに、文政権の“失敗”した国家作りにも言及しています。

文在寅=反国家勢力

尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領が文政権に対して「反国家勢力」と発言したことに文在寅(ムン・ジェイン)が怒った。「冷戦的思考」云々しながら文在寅が展開した主張の要旨は「金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代に南北関係が発展し、(その結果として)国民所得が大幅に増大した」ということだ。

事実関係を嘘で塗り固めた主張だ。北朝鮮がパキスタン核開発の父であるアブドゥル・カディール・カーン博士の助けを借りてウラン核兵器開発に本格的に乗り出したのは、金大中政府時代の1990年代後半だった。初の核実験は盧武鉉政府時代の2006年で、「核武力高度化」に拍車をかけたのは文在寅政府の時だった。

進歩政府時代の対北朝鮮政策の産物として国民所得が大幅に増大し、保守政府時代には平和が危うくなり国民所得まで減った」ということは統計まで歪曲した主張だ。

文在寅が根拠にした資料は2019年左派陣営に回ったSNS掲示物と推定される。為替レート変数を無視したままドルを基準に「金大中、盧武鉉、文在寅時が、金泳三(キム・ヨンサム)・李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)時より1人当り国民所得が4.5倍成長した」という荒唐無稽な内容を含んでいる。経済成長率は当該国の通貨を基準にしなければならないという基本も無視したものだ。

グーグル検索に「国民所得推移」だけを入力してみても真実がすぐ分かる。韓国銀行と統計庁の1人当たり実質国民総所得統計を見れば、この30年間、韓国経済は左右政権別区分が無意味なほど均等に成長した。

前年比1人当たり実質国民総所得増加率を見ると、金泳三政府時代の1993年~97年それぞれ6.1%。8.3%、7.7%、5.6%、金大中政府時代の1998年~02年マイナス8.3%、9.9%、5.6%、3.2%、8.0%、盧武鉉政府は2.1%、3.9%、2%、3.4%、李明博政権は±0。

任期最後の年の1人当たり実質国民総所得が就任直前年度に比べてどれだけ増えたか」を計算してみると、金泳三政府は478万ウォン、金大中344万ウォン(通貨危機を考慮して任期初年度を基点にすれば498万ウォン)、盧武鉉395万ウォン、李明博308万ウォン増えた。

朴槿恵政府は2017年を任期最後の年と計算すれば593万ウォン、2016年を最後の年と計算すれば491万ウォン増え、文在寅政府は2022年対比2017年を比較すれば149万ウォン、2016年を比較対象にすれば251万ウォン増えた。

国際経済状況など多様な条件を度外視したまま、南北関係と所得増加率を因果関係で捉えるというごり押しも前職大統領とは信じがたい水準だが、統計の恣意的歪曲に見え隠れする陰険さがさらに度肝を抜く思いだ統計が気に入らないからといって統計庁長を更迭した習性の表れだろう。

もちろん「反国家勢力」という表現がストレートで刺激的な語彙だったことは事実だ。ある中道保守性向の学者は「『大統領は与野党を合わせて国民和合に導いていかなければならないのに、野党を敵対視してどうやって国民皆なの大統領になれるのか』という批判が提起されかねない」と前提した上で「しかし今のような時期には必要な処方だ」と評した。新冷戦の世界秩序の中で深刻な南北、南南対立が繰り広げられる理念的混乱期には、国家が進むべき方向と国家アイデンティティを明確にするのが正しいという説明だ。

文政権が志向した新しい国が、従来の大韓民国とは違っていたのは事実だ。ここで新しさはアップグレードの概念ではなく、大転換を意味した。

文在寅は政権獲得前の著書やインタビューなどで「勢力政治で国を滅ぼした老論勢力が日帝強占期に親日勢力になり、解放後は反共という仮面をかぶって独裁勢力になり、依然既得権として残っている」という一部歴史学者の主張をよく引用し、主流勢力の交替、大清算、歴史交替を唱えた。ろうそくデモを革命と規定し、革命政府を自任した。

外交安保官も格別だった。国情院の対共捜査権をなくし、機務司令部(軍内の防諜業務および軍人と軍事機密に対する保安監視を行う国防部直轄部隊で、司令官は陸軍中将)の解体などを通じてスパイを捕まえる機能を事実上瓦解させた。韓国主権の一部を放棄してまで中国に3不1限(3不=アメリカのMDシステム、サード追加配備、韓米日軍事同盟をしないこと。1限=既に配備されているサードの運用を制限すること)を合意したことは、文在寅が国際秩序を特有の見方で見ていることを示している。

李在明はユン大統領の反国家勢力発言に対して「文在寅政府で検察総長を務めた自身の過去を忘れた深刻な自己否定」と非難したが、こんなのはいつもの李在明らしく無理な論理だ。

保守性向の国民が文在寅政権に対して疑問を示す時、その意味は政権構成勢力の一部および政権の支援で活性化された各種団体内に反国家的認識観点言動があり、そのような要素が過去に比べて著しく拡張され強くなったという意味であって、政府自体が反国家勢力だったという意味ではないことは李代表も知らないはずがない。

その上、ユン大統領はムン政権によって任命されたが「反国家的行為」に加担する代わりにそのような行為を厳断しようとした。教育の公正性を破壊する権力核心層の入試不正、大統領府の広域市長選挙介入、強圧的な原発閉鎖といった行為を違法措置しようとした。

もちろん、結果的に文政権の「国家作り」は失敗した。ただ一つ成功したのは、自分の陣営に黄金の茶碗を配ることだった。

 

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